TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「3/8 ファミリースポーツチャレンジ(江東区)」実施レポート

2025.03.21
TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「3/8 ファミリースポーツチャレンジ(江東区)」実施レポート

2025年3月8日(土)、東京都江東区で開催された「3/8 ファミリースポーツチャレンジ」で、「TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム」を実施しました。

ゲストアスリートとしてお迎えしたのは、デフバスケットボールの越前由喜(えちぜんゆうき)選手、三瀬稜史(みつせたかし)選手、山田洋貴(やまだひろき)選手です。
このほか、パワーリフティング体験やVR等を活用した陸上競技(レーサー)体験ができるコーナーを設けました。

当日の様子やそれぞれのパラスポーツの魅力を紹介します。

デフバスケットボール

TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「3/8 ファミリースポーツチャレンジ(江東区)」実施レポート

デフバスケットボールとは、聴覚障害者によるバスケットボールのことです。特徴は競技中の仲間が走り回る足音、ドリブルでボールが跳ねる音、味方や監督の声、観客の応援の音などが聴こえにくい、もしくは全く聴こえない状態でプレーをすることです。
ルールについては、国際・国内大会における競技規則は通常のバスケットボールと同一のルールを採用していて、特別なルールはありません。ただ選手たちの競技中の音が聴こえない、聴こえにくいための措置として、協会主催の大会では、試合中にコートの対角にフラッグマンを設置、審判やテーブルオフィシャルのブザーの音が鳴るのと同時に目立った色の旗を振ってもらうことで、視覚的に状況を判断できるようにしています。

デフバスケットボールの越前選手、三瀬選手、山田選手がゲストアスリートとして、この日指導にあたってくれました。3人とも2024年のDIBFアジア太平洋デフバスケットボール選手権大会(オーストラリア)に出場して、4位を獲得している選手です。
今回の体験会は、1回50分、1日4回開催しました。会場となった陸上競技場に約14メートル×約10メートルのスペースを作り、ゴール1台を設置して、小学生・中学生や親子など幅広い年齢の方々が参加し、参加者全員が、耳栓と“イヤーマフ”をして音が聴こえない状態でデフバスケットボールを体験しました。

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最初は、手話の練習をしました。
選手たちが、「知っている手話はありますか?」と参加者に向けて質問をした場面では「ありがとう」の手話を、知っていると元気に話す小学生もいました。
他にも「わかりました」「わかりません」「よろしくお願いします」などの表現の仕方を選手たちが参加者らに教えてくれました。そして「手話は手だけではなくて、表情や体も一緒に表現するとより伝わりますよ」と越前選手が手話通訳者を介して伝えてくれました。

参加者がきこえない環境に慣れるため、チームに分かれてリレー形式のゲームをしました。山田選手がリレーの方法を説明した後、「わかった?」と参加者に尋ねると覚えたての手話で「わかった!」と参加者らが伝え、楽しそうにコミュニケーションを取っていました。
そして徐々にリレーの難易度を上げて、後ろ向きに走ったり、ドリブルやジグザグ、そしてドリブルからシュートをしたりという動きを加えながら、ウォーミングアップを行いました。

TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「3/8 ファミリースポーツチャレンジ(江東区)」実施レポート
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最後には、選手たちも参加してミニゲームを実施し、大人から子供までデフバスケットボールを楽しんでいました。
試合後には、選手3人と参加者7-8人での対戦試合を行った回もありました。迅速なパス回し、スピードのあるドリブル、遠くの位置からの確実なシュートなど、参加者たちは選手たちの圧巻のプレーを間近に見ることもできました。

体験に参加した小学生の男の子の保護者は「きこえないが故に、うまくコミュニケーションが取れずパス回しができずにいるなぁ、と(コートの外から)ずっと見守っていました。後半は、チームメンバーに手を振ったり指を刺したりして、なんとかボールを渡せていたみたいですが、息子にとっても貴重な体験になったのではないでしょうか」と話してくれました。

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越前選手は「今回の体験を通して、デフスポーツ(デフバスケ)の良い意味での社会的位置付けを改めて確認できました。参加者の中でデフリンピック、デフバスケを知っていた方々はごくわずかで、参加者の7割程度が小学生前後だったので知らない方がほとんどであることは想定しておりましたが、今年、東京デフリンピックが控えてる中、私たちがすべきことは何か、楽しく体験会を進行しつつ裏では色々と考えさせられるものがありました。(体験中に)色々と難しい話もしてしまいましたが、体験会を通してたくさんの人にデフバスケを知っていただいたことが何よりも嬉しかったです。聴こえない・聴こえにくい感覚は参加者にとって未知の世界だったと思います。やりにくさ、違和感だらけの中でプレーをしていたと思います。それが当たり前である私たち(ろう者)との違いを多少感じていただけたのではないかと思います。
今回の体験を通して、聴こえないとはどんなことなのか、聴者のバスケットボールとの違いは何か、体験した方々自身が何かしら気づいたことがあれば嬉しいです。東京デフリンピックに向けて、そしてこれからデフスポーツを広めていくために、今回のような体験会を積み重ねること、継続していくことが大切だなと感じました。」と熱く語ってくれました。

三瀬選手は「手話講座とデフバスケ体験を通じて、多くの方にデフバスケットボールや手話の魅力を知っていただけたことを嬉しく思います。特に、子どもたちが手話講座で覚えた手話、サインエールに興味を示してくれたことが印象的でした。
ステージに登壇した際には、聴こえる人と聴こえない人が共にサインエールを行い、交流する姿を目の当たりにし、これがデフリンピックやデフバスケットボールの認知向上につながると感じました。今後も引き続き、デフバスケットボールの啓蒙活動に取り組んでいきたいと思います。」と体験後の思いを伝えてくれました。

山田選手は「特に印象に残ったデフバスケ体験では、プレーしている最中、一切耳に頼らずアイコンタクトや手話、身振り、指差し、仲間を引っ張ったり押したりしながらコミュニケーションを取るその大変さや楽しさ、視覚や触覚のみでのコミュニケーションを取る新鮮さを伝えられたかなと思っています。もっと東京デフリンピックやデフスポーツを沢山の方々に知っていただくために、今後も積極的にこういう体験を行なっていきたいです。」と語りました。

パワーリフティング

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パラパワーリフティングは、パラリンピックでは、下肢障害や低身長(男子144cm以下、女子140cm以下)の選手が対象です。試合は障害の種類や程度によるクラス分けではなく体重別で行います。全身が乗るように特注されたベンチプレス台を使って、上半身の力だけでバーベルを持ち上げる競技です。一般のパワーリフティングの場合は、脚を地面につけて脚力も使ってバーベルを持ち上げるのに対して、パラの場合は上半身だけに頼ります。

パワーリフティング体験には、山下貴久雄(やましたきくお)選手がゲストアスリートとして参加してくれました。
山下選手は、2024年の第7回チャレンジカップ京都 男子107㎏や第2回岡山オープンパラ・パワーリフティング大会男子107kgで優勝するなど、歴代の大会でも入賞を果たしてきた選手です。

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途中、山下選手によるデモンストレーションがありました。20kgのバーベル(棒)だけの状態から徐々にプレート(重り)を加えていき、100kg台のバーベルを持ち上げる姿を披露してくれました。
そして山下選手は、デモンストレーション後に「手首を真っ直ぐに固定するとより力が入るため、(試合などでは)リストストラップを巻くこともあります」と教えてくれました。
100kg台のバーベルが上がる瞬間を目の当たりにした小学生の男の子と参加していた親子は「車いすなのに、パパよりも重いのを持ち上げたよ!」と興奮気味に父親に話していました。

参加者たちは、各々がチャレンジしたい重さに向けて、時には重しを増やしながら挑んでいました。中にはバーベルの棒(シャフト)を持ち上げるだけで大変と言う方もいました。
15kgのバーベルで挑戦し、実際に体験してみると、上半身だけで重たいものを持ち上げるのがいかに大変かを体感することができました。

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山下選手は、パラパワーリフティングの魅力について次のように語ってくれました。
「パワーリフティングはシンプルな競技で、“3秒のドラマ”とも表現されます。バーベルを下ろして持ち上げるまでのたった3秒間にコーチとのやり取りとか“あうんの呼吸“が必要で、実は奥の深いスポーツなんです。
健常者のパワーリフティングと比べて、パラの方が美しさを求められて判定が厳しいと感じています。バーベルを水平な状態で胸につくまで下ろして、ピタッと止まり、そのまま最後まで水平を保って持ち上げることが必要です。
このような体験の場などをきっかけに、障害のある人もない人も一緒に楽しむことでコミュニケーションを深めて、いろんな人がいると相互理解が進んだり、寛容な世の中になったりするといいですね」

VR等を活用した陸上競技(レーサー)体験

会場ではVR等を活用した陸上競技(レーサー)体験も実施しました。車いすの選手が使用する「レーサー」と呼ばれる3輪の競技用車いすに実際に乗車し、VRゴーグルを装着して、トラックや道路を走る感覚を味わいました。

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まず驚くのは、レーサーの座席が想像以上に狭いことです。成人の場合、お尻を斜めにして乗車しないと座ることさえできません。レーサーと身体をこれくらい密着させないと、スピードを出すことができないそうです。また、車体のバランスを保つのが難しく、かなりの前傾姿勢を取らないと車体前方が持ち上がってしまったり、後ろに倒れてしまったり、そしてスピードが出なかったりします。選手たちが過酷な状況で競技に参加していることもわかりました。

今回のVR等を活用した陸上競技(レーサー)体験は、地域スポーツクラブとの連携で、「陸上競技クラブ AC・KITA」さんが運営をサポートしてくれました。体験会に参加した感想を伺うと「実際に体験すると得られる発見や喜びがあって、(参加者の)皆さんの表情が生き生きするのがわかります。体験会に頻繁に来てくださるコアなファンの方や応援してくださる方もいます。パラの選手を間近に見る貴重な機会なので、ぜひ足を運んで欲しいですね」と話してくれました。

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その他

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会場内に展示コーナーを設けました。今年の11月に東京で開催されるデフリンピックの概要やパラスポーツの魅力を紹介したほか、視覚障がい者がプレーするゴールボール用のボールも展示しました。

また、会場内の特設ステージでは、TEAM BEYOND「パラスポーツ体験プログラム」について紹介する時間もありました。デフバスケットボールの越前選手、三瀬選手、山田選手、パワーリフティングの山下選手が登壇し、デフバスケットボールでのコミュニケーションの取り方やパワーリフティングの“3秒のドラマ”について話しました。ステージ前で選手の話を聞いていた人たちは、初めて知る競技の魅力に引き込まれている様子でした。

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一線で活躍するアスリートをゲストに招き、体験や展示を通じてパラスポーツの魅力を知ってもらう「TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム」。
2024年度も様々な会場でいろいろな種類のパラスポーツ体験を実施いたしました。
体験会にご参加いただいたみなさま、誠にありがとうございました。
実際に体験することで、楽しさや難しさ、選手たちのすごさを知っていただけたのではないでしょうか。今回の体験をきっかけに、もっとパラスポーツに興味を持っていいただき、他の競技について知ったり、観戦をしたり、よりパラスポーツを応援していただけると嬉しいです。

・スタンプラリーの詳細はこちら↓
https://www.para-sports.tokyo/sports/taiken/passport

・TEAM BEYOND LINE公式アカウントの詳細はこちら↓
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