TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「3/2 住友金属鉱山アリーナ青梅まつり(青梅市)」実施レポート

2025.03.14
TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「3/2 住友金属鉱山アリーナ青梅まつり(青梅市)」実施レポート

2025年3月2日(日)、東京都青梅市で開催された「3/2 住友金属鉱山アリーナ青梅まつり」で、「TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム」を実施しました。

今回の体験プログラムには、ゲストアスリートとしてデフサッカーの國島佳純(くにしまかすみ)選手をお迎えしました。当初は瀧澤諒斗(たきざわあきと)選手もお迎えする予定でしたが、急遽参加できなくなり、午後に、ピンチヒッターとしてデフサッカー男子日本代表チームの監督である吉田匡良さんにお越し頂け、國島選手と一緒に会場を盛り上げていただけました。

このほか、座位バレーボール体験や、デジタル技術を活用したアルペンスキー体験ができるコーナーを設けました。

当日の様子やそれぞれのパラスポーツの魅力を紹介します。

デフサッカー

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「デフ(deaf)」とは英語で、「きこえない人、きこえにくい人」という意味です。デフサッカーとは聴覚障害者のサッカーのことで、競技中は補聴器を外すことが義務付けられていることから「音のないサッカー」の愛称で呼ばれています。
デフサッカー・デフフットサル日本代表候補の國島選手は、第24回夏季デフリンピック競技大会ブラジルカシアス・ド・スル2021の女子サッカーで4位、 2023年の第5回ろう者フットサル世界選手権大会で優勝し、第20回冬季デフリンピック競技大会の女子フットサルで5位を獲得した選手です。

國島選手は、「聴覚障害者でも話せる人と話すことが苦手・難しい人がいます。それは個性だと思って受け入れてもらえると助かります。デフサッカーやデフフットサルのルールは健常者の試合と変わりません。ただ、わたしたちは笛の音などはきこえないので、審判が代わりに旗を使います。今日もミニゲーム中はこの旗に注目してください。」と参加者に向かって呼びかけました。

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今回の体験会は、1回60分、1日5回開催しました。参加者は小さな子どもや小学生・中学生が特に多く、耳栓とイヤーマフをして音がきこえない状態を疑似的に作り出してデフサッカーを体験しました。
体験会では、最初に手話をつかったコミュニケーション講座から始まり、ドリブル練習や、伝言ゲーム、シュート練習、最後にミニゲームを行いました。
手話の講座では、「ありがとう」「こんにちは」のほかに、サッカーに関連して「サッカー」「頑張れ」「うれしい」「拍手」など手話でどう表現するかを國島選手が参加者に教えてくれました。拍手をしても選手は聞こえないため、手話では両手をあげて、顔の横でキラキラと揺らすことが「拍手」だと教えてくれました。そして、「青」「オレンジ」「緑」の色についても、覚え方と一緒に分かりやすく教えてくれました。

ドリブル練習では、國島選手は、青・オレンジ・緑の目印を床に置き、どの色かを手話で合図した後、参加者たちはその色を目がけてドリブルして再びスタート位置に戻ってくる練習を行いました。
ドリブルする人を待っている間に他の参加者たちは手話で「頑張れ」と応援したり、合図通りの色の目印を回って帰ってきた人に手話で「拍手」を送ったりしていました。

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伝言ゲームでは、声を出さないで口の形だけで言葉を伝えることに参加者たちは挑戦し、きこえない状況でどのようにコミュニケーションを取ったらよいのかを学びました。
さらにシュート練習では、実際にキーパーを務めていた國島選手が参加者に対して「自分はキーパーを務めていたので、みなさんのシュートを全部止めます」と宣言し、実際に全てのゴールを止めた回では、参加者が手話で「拍手」をする様子が見られました。

最後に國島選手も参加してミニゲームを実施。年齢性別を問わず、参加者は積極的に試合に参加して、白熱した展開となりました。
國島選手の素早い動きや正確なボールさばきを間近で見ることができて、参加者たちは興奮した様子でした。そして試合を終えると、「難しかったけれど楽しかった!」という声があちらこちらからきこえてきました。
参加者の男の子は「“イヤーマフ”で音がきこえにくくて、声を出せなくても、サッカーが楽しめるということを知れてよかった。」と語っていました。

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また、午後の第4回目に急遽お越し頂いた吉田監督は、手話講座のサポートやドリブル練習を進行しながら「耳がきこえなくても、わたしたち(健常者)と同じように代表選手たちやろう者はサッカーを楽しむことができます。選手がどんな風にコミュニケーションをとって、どんな風にチームメイトにパス回しをしているのかなど、デフサッカーだからこその見どころや面白さがあります。今年の秋に行われる東京2025デフリンピックでは、ぜひ実際に試合をみて選手たちの凄さやチームワークの素晴らしさを知ってほしい。」と語りました。

体験会を終えて國島選手に感想などを伺いました。

「デフリンピックやデフサッカーがまだ認知されていないと感じました。今年はデフリンピックが東京でせっかく開催されるのに知らないのはもったいないので、このような体験会が増えたらうれしいです。デフサッカー体験では、サッカーに限らずに普段でもデフの方とどうコミュニケーションを取るか、どんな工夫ができるのかという気づきも得られるので、体験会は大事な機会と思っています」と話しました。

また、「私はデフサッカーを中心とした生活をしています。このデフサッカーを通じて共生社会に必要なことを少しでも伝えて、より豊かに暮らしていける社会にしていけたらと思います。同時に、ろう者のスポーツの存在は認知度が低いので、自分たちが選手として活躍して認知度が高まり、将来の選手獲得につながればと思っています。そのためにはデフリンピックで結果を出すことが一番大事なので、この一年は結果によりこだわってトレーニングに励みます。」と力強く語ってくれました。

座位バレーボール

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座位バレーボールとは、床にお尻をつき、座った姿勢でプレーをする6人制バレーボールのことです。一般のバレーボールと比べてコートサイズなどの違いはありますが、ルールは基本的に一般のバレーボールと同じです。試合は、ラリーポイント制3セット先取の5セットマッチで行われます。選手はお尻を床から離せないため、腕の力でお尻を滑らせるようにポジションを移動します。コートの広さは一般のバレーボールコートよりも狭く(サイドライン5m、エンドライン6m)、座位で行えるよう、ネットの高さも低く設定されています(男子1.15m、女子1.05m)。サーブ、スパイク、ブロックの時は、お尻を床から離すことはできませんが、レシーブの時だけは、一瞬、床から離すことが認められています。

今回の座位バレーボール体験は、1チーム3、4人でやわらかいビニール製のボールを使って実施しました。「特定非営利活動法人障がい者スポーツクラブHIMAWARI」さんにルールやプレーのコツなどを指導いただくなど、地域スポーツクラブとの連携もありました。

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プレー中はお尻を床から離すことができないため、ボールの動きに合わせて移動したり、上半身をうまくコントロールしてボールを打ったりすることが想像していたよりも難しく、参加者たちはラリーを続けるのも最初はかなり大変な様子でした。しかし、段々と慣れてくるとラリーも続くようになり、小さな子どもから大人まで楽しくプレーができるようになってきました。

今回の運営を指導・サポートしてくれた同法人理事長の栗原寿江さんは、座位バレーボールの魅力について次のように話しました。

「健常者のバレーボールの場合、走ったり、飛んだりしますが、年齢を重ねるとこれらの動きが辛くなってきます。座位バレーボールの場合は、逆にこれらの動きが制限されるので、アタックやレシーブなどのある意味バレーボールの醍醐味とも言えるところだけを味わえるのがいいところです。また、特別な道具なども用意しなくても、座るだけでできてしまう手軽さもあります」。

デジタル技術を活用したアルペンスキー体験

会場ではデジタル技術を活用したアルペンスキー体験も実施しました。障害の種類によって立位、座位、視覚障害の3カテゴリーに分かれて、さらに障害の種類や程度によってクラス分けされています。座位のカテゴリーの選手たちが使用するのが「チェアスキー」で、シートに座り、ベルトで上半身を固定しつつ、上半身を動かしてチェアスキーを操作します。

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今回の体験では、このチェアスキーを模した機器に座り、ターン技術が求められるスーパーGの種目に挑戦しました。目の前のモニターに映し出されたコースに合わせて上半身を動かしていきますが、日常生活ではあまり行わない動きのため、瞬時に判断してバランスよく、テンポよく体を動かしていくのが大変でした。

その他

会場内には展示コーナーを設け、2025年に東京で開催されるデフリンピックの概要やパラスポーツの魅力を紹介しました。

視覚障がい者がプレイする5人制サッカー(ブラインドサッカー)の光を遮断するブラインドゴーグルと、転がると音が鳴る専用のボールを展示したほか、重度障がい者のために考案されたパラリンピック競技にもなっている、ボッチャ。そのクラスの中でも、障害の程度が重く、1人ではボールを投げることが難しい選手が行うために使うランプ(勾配具)を模し、作成したダンボールランプの展示も行いました。

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作成に至った背景には障がい者スポーツクラブ HIMAWARIさんの要望から、地元の企業であるカネパッケージ株式会社に依頼が入り製作することになったということをお聞きしました。

同社の新規事業推進室で、このダンボール製の勾配具を開発した担当者は「ダンボールを用いて勾配をつけるのが難しかったですが、弊社の緩衝材開発の経験をもとに完成させました。勾配具を自作するとなるとかなり大変であるため、弊社の製品は手軽に導入できると大変喜ばれ、全国から注文が入っています。
また、段ボールを組み立て作っているからこそ、パーツを一つずつ外していくと平たくコンパクトになり、持ち運びや郵送も簡単にすることができます。」
と語りました。

TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「3/2 住友金属鉱山アリーナ青梅まつり(青梅市)」実施レポート
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一線で活躍するアスリートをゲストに招き、体験や展示を通じてパラスポーツの魅力を知ってもらう「TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム」。実際に体験することで、楽しさや難しさ、選手たちのすごさを知っていただけたのではないかと思います。

次回のレポートは、2025年3月8日(土)に開催されたファミリースポーツチャレンジ(江東区夢の島総合運動場)での実施内容についてご紹介いたします。お楽しみに!

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20250314

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