TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「1/26 第22回新宿シティハーフマラソン・区民健康マラソン(新宿区)」実施レポート

2025.02.07
TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「1/26 第22回新宿シティハーフマラソン・区民健康マラソン(新宿区)」実施レポート

2025年1月26日(日)、東京都新宿区で開催された「1/26 第22回新宿シティハーフマラソン・区民健康マラソン」で、「TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム」を実施しました。

2021年に開催された東京2020オリンピック・パラリンピックにおいて、開閉会式を開催するなどメインスタジアムとして使用された国立競技場。1月26日に実施されたマラソン大会はこの競技場をスタート、フィニッシュ地点としていたため、多くの人で賑わっていました。

今回の体験プログラムには、ゲストアスリートとして車いすフェンシングの角田成(つのだあきら)選手と吉澤周子(よしざわちかこ)選手を、さらにゲストアスリートスタッフとして一般社団法人日本パラフェンシング協会ナショナルコーチの三宅諒(みやけりょう)さんをお迎えしました。
このほか、車いすテニス体験や、VRを活用した卓球体験ができるコーナーを設けました。

当日の様子やそれぞれのパラスポーツの魅力を紹介します。

車いすフェンシング

TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「1/26 第22回新宿シティハーフマラソン・区民健康マラソン(新宿区)」実施レポート

車いすフェンシングは基本的に一般のフェンシングと同じ剣や防具を使用し、かけ引きとスピード感が魅力の競技ですが、立って移動する一般のフェンシングと違い、車いすフェンシングでは「フレーム」と呼ばれる装置に車いすを固定し、上半身のみで戦う戦略的なスポーツです。
種目は剣や有効面の違いによって「フルーレ」「エペ」「サーブル」の3つがあり、フルーレは胴体のみの突き、エペは上半身への突き、サーブルは上半身の突きと斬りが有効打になります。試合は予選と決勝のどちらもポイント制で勝敗を決定します。予選では3分間、5ポイント(突きが1回決まると1ポイント)先取で勝負が決まり、決勝戦は3分間1セットとして3セットが行われ、15ポイント先取方式で勝敗が決まります。
逃げ場のない状況で繰り広げられる素早い攻防と、相手の動きを読みながら最適な戦略を選ぶ頭脳戦が魅力です。
今回は「フルーレ」の体験会を行いました。

体験会は、国立競技場外構部Bゲート付近で、1回45分、1日4回開催しました。参加者は、小さな子どもからその親御さん、シニアまで、幅広い世代にわたり、初めての車いすフェンシングに興奮した様子でした。
指導にあたってくれたのは、角田選手と吉澤選手です。角田選手は2024年の車いすフェンシングアジア選手権(タイ)でサーブル個人、フルーレ個人の2種目で銅メダルを獲得したほか、さまざまな国際大会で入賞。自身が23歳の時に交通事故で脊髄損傷によって下肢機能をほとんど失い、事故以前は格闘技をしていたことから、車いすでも闘える車いすフェンシングを2016年から始めました。

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また吉澤選手は、日本パラフェンシング協会育成選手で、日本パラスポーツ協会JapanRisingStarプロジェクト8期推薦選手です。以前から運動するのが好きでしたが交通事故で両足を切断しました。車いすフェンシングが汗をかくスポーツであることを知って興味を持ち、2024年1月から取り組み始めました。

さらに、ロンドン2012オリンピックの男子フルーレ団体で銀メダルを獲得した三宅さんが、スタッフとして体験会に参加。三宅さんは現在、日本パラフェンシング協会でナショナルコーチとして、選手の強化にあたったり、車いすフェンシングの魅力を伝えたりしています。

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体験会では、角田選手と吉澤選手のデモンストレーションを交えながら、三宅さんが車いすフェンシングのルールの説明やその魅力を語ってくれました。角田選手と吉澤選手の動きを目の前にして、参加者たちはそのスピードに驚きの声を上げていました。また、電気審判機を用いて、判定ランプが同時に点灯した場合はどちらに得点が入るかを問いかける場面もあり、参加者たちは楽しみながらルールを理解することができました。

ルールなどを理解した後、参加者は車いすに座り、吉澤選手に剣の握り方を教わってから、角田選手を相手に剣で突く体験をしました。そのまま突く、相手の剣を叩いてから突く、相手の剣を避けてから突くなど5つの攻撃パターンに挑戦しました。

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昨年夏からフェンシングを習っているという8歳の男の子は、「動画で見てかっこいと思って始めました。普段の対戦では後に下がってしまうけれど、車いすフェンシングでは後に下がれないことを知りました」と話してくれました。
また、ハーフマラソンを走り終えて参加したという40代の男性は、「車いすフェンシングは繊細なスポーツだと思っていたら、格闘技の要素があると初めて知って勉強になりました。競技に合わせた体づくりをされているアスリートの皆さんに尊敬の気持ちを純粋に抱きました」と興奮気味に語ってくれました。

体験会を終えて角田選手、吉澤選手、三宅さんに感想などを伺いました。

角田選手は、「普段は興味のある方々に向けた体験会に参加しているので、今日の体験会に人が集まるのか不安がありましたが、実際には子どもから年配の方までが参加してくれて私自身とても良い機会となりました。私はケガをしてからできなくなってしまったことも多いのですが、ケガをしたからこそできる挑戦もあります。そういう状況で一生懸命取り組んでいることを多くの方に知ってもらえたらうれしいです」と話しました。

吉澤選手は次のように話してくれました。
「今日の体験会を通じて、車いすフェンシングだけでなくて、健常者のフェンシングにも興味を持ってもらい、フェンシング界全体が盛り上がっていくとうれしいですね。私は障害を負った時に、同じ障害の人の暮らしをSNSで探して、これだけ歩いていますとかスノーボードをやっていますという発信を見て元気をもらいました。私もパラスポーツをやっていることを発信して、誰かの何かの影響になればと思っています」。
そして三宅さんは、「車いすフェンシングをされている方々を見ていると、僕が現役の時に考えてもみなかったフェンシングの取り組みや試合の技術を目の当たりにして、感動することがあります。車いすフェンシングの選手たちには、この車いすに座った理由をフェンシングを通じて表現してほしいと思います。応援する皆さんにも、背景にあるストーリーにも注目してほしいです」と語ってくれました。

車いすテニス

車いすテニスは、ルールもネットの高さもコートの大きさも一般のテニスと基本的に同じで、2セット先取の3セット制です。ただし、一般のテニスでは、1バウンド以内で返球しないといけないのに対して、車いすテニスでは2バウンド以内での返球が認められています。座った状態からの力強いサービスや車いすを巧みに操作しながらのラリーなど、さまざまな技術を駆使した試合展開が魅力です。

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会場に6メートル×3メートル、真ん中にネットを設置したミニコートを用意。実際に車いすに座ってラケットを持ち、ラリーを体験しました。テニス用車いすは標準的な車いすとは異なり、操作がしやすいよう背もたれなどの競技に不要な部分をなくすことで軽量化したり、車輪をハの字に傾けることで回転性を高めたりと動きやすくするための工夫が凝らされていました。

実際にボールを持って打ち合いを始めると、座っているだけでサーブが打ちづらく、また相手の返球に対しても素早く車いすを移動させることができないため、選手の技術力やチェアワークの巧みさに改めて感心してしまいました。

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マラソンのボランティアの休憩時間に体験に訪れたという70代の女性は、「テニスをやっていて車いすテニスの試合もよく見ています。そのため、車いすテニスは簡単にできるだろうと思っていましたが、そうではなかった。今度は広いコートで体験してみたいです」と話してくれました。

VRを活用した卓球体験

会場ではVR(ヴァーチャル・リアリティ=仮想現実)を活用した卓球体験も実施しました。パラリンピックでの卓球は、肢体不自由や知的障がいのある選手が対象で、障害の種類や程度に応じてクラス分けされています。車いす、立位は各5クラス、知的障がいは1クラスで合計11クラスがあります。

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基本的なルールや卓球台は一般の卓球と同じですが、障がいに応じてルールを一部変更。選手は自分の障がいに合わせた独自のプレースタイルを確立し、相手の障がいやプレースタイルを観察して攻撃の方法を組み立ています。

今回の体験では、参加者は車いすに座り、VRゴーグルを装着。仮想空間上に卓球台と球が現れ、コントローラーでサーブしたり、相手からの球を打ち返したりします。卓球の醍醐味はやはりスピード感。車いすをスムーズに動かすことができず、目では球を追えていても返球することができない場面がいくつもありました。

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その他

同じ会場内の本部ステージにて、「TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム」のPRタイムに、角田選手、吉澤選手、三宅さんが壇上に上がり、角田選手、吉澤選手は自身の障がいのことやパラフェンシングを始めたきっかけ、競技の魅力について語りました。また三宅さんは、障がい者と健常者が車いすに座った状態で競技する「シッティングフェンシング」の大会を実施していることや障がい者アスリートならではの動きのすごさなどについて話しました。

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一線で活躍するアスリートをゲストに招き、体験や展示を通じてパラスポーツの魅力を知ってもらう「TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム」。実際に体験することで、楽しさや難しさ、選手たちのすごさを知っていただけたのではないかと思います。

次回は、2025年3月2日(日)に、住友金属鉱山アリーナ青梅まつり(住友金属鉱山アリーナ青梅)で実施します。ぜひご参加お待ちしています!

パラスポーツ体験プログラムでは、スタンプラリーを実施しています。集めたスタンプ数に応じてオリジナルグッズをプレゼント!皆さんの参加をお待ちしています!

・スタンプラリーの詳細はこちら↓
https://www.para-sports.tokyo/sports/taiken/passport

・パラスポーツ体験プログラム 今後の実施予定はこちら↓
https://www.para-sports.tokyo/sports/taiken/schedule

・TEAM BEYOND LINE公式アカウントの詳細はこちら↓
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