2024年6月22日（土）、葛飾区にある奥戸総合体育館で開催された「パラスポーツinかつしか2024」の中で、「TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム」を実施しました。

2020年から2022年まで全日本テコンドー選手権大会で3連覇した阿渡健太（あわたり けんた）選手をゲストアスリートにお迎えしてパラテコンドー体験を行ったほか、陸上競技用車いす体験（レーサー）やVRを活用した車いすフェンシング体験を実施。来場者には家族連れが多く、親子一緒にパラスポーツを楽しむ姿が見られました。

当日の様子やそれぞれのパラスポーツの魅力を紹介します。

パラテコンドー

“足のボクシング”とも言われ、パラリンピック唯一のフルコンタクト競技であるテコンドー。2009年に初の世界パラテコンドー選手権が実施された新しいパラ競技です。現在はキョルギ（組手、身体障害のある選手にとってのパラ・テコンドーキョルギ）と、プムセ (型、知的障害選手のためのパラ・テコンドープムセ) の2種目が存在します。
キョルギは、障害者スポーツでは珍しい、相手に直接打撃を加えるフルコンタクトの格闘技です。
今回の体験会ではまず、ゲストアスリートの阿渡健太選手から自己紹介とパラテコンドーの説明がありました。生まれつき両手がなく、2017年にパラテコンドーを始めたという阿渡選手。パラテコンドーの魅力について、「自分の身一つで戦う競技であり、障害の程度によってさまざまなファイティングスタイルや戦術があるところがおもしろい」と教えてくれました。

参加者は肩回しや屈伸で体をほぐした後、2人1組になって向かい合い、キックやもも上げを練習。片方の人が腰の高さに手を伸ばし、もう片方の人はその手にタッチできるよう右・左とももを上げます。ポイントはもも上げの際に足首を伸ばすことだそう。これを何度も繰り返すので、この時点で息が上がっている様子の参加者もいました。

次はいよいよミットに蹴りを当てます。前蹴り、まわし蹴り、後ろまわし蹴り、360度回転まわし蹴りのやり方を一つずつ教わり実践。少しずつ難しくなっていくので、「あれ、この後どっちの足を動かすんだっけ？」と混乱したり、ミットに当たらず苦笑したりする人も。阿渡選手がお手本を見せると、迫力ある華麗な蹴りに歓声が上がりました。自分でやってみると、その動きがいかにすごいものなのかが分かりました。

体験の最後は希望者のみ、好きな蹴り方で板割りに挑戦。「パアン！」という小気味良い音が次々と体育館に響き渡り、参加者は満足そうに顔をほころばせていました。体験会後には割った板に阿渡選手がサインを書いてくれて、参加者全員で撮影会を実施しました。サイン付きの板と一緒に、阿渡選手とのツーショットの撮影をお願いするお子さんも少なくなく、充実した体験会となった様子も窺えました。

体験会終了後、阿渡選手は「最初は僕の姿を見て少し驚いたり戸惑ったりしていた子も、だんだん慣れて普通に話しかけてくれるようになります。こうした体験を機に、パラアスリートを身近に感じてもらえたら」と話していただくなど、パラスポーツの魅力だけにとどまらず様々な気づきを得る機会にもなっていました。

陸上競技用車いす（レーサー）体験

パラリンピックの陸上競技に使われる3輪の車いす「レーサー」をご存知でしょうか。風の影響を最小限に抑えスピードを出しやすい構造にした競技用具で、年々進化を遂げ選手の記録更新に一役買っています。会場にはこのレーサーを体験できるコーナーも設置しました。実際の競技では車いすでトラックや路上を走りますが、今回は気軽に体験できるようその場に固定。ホイールのハンドリム（車いすの後輪の外側についている輪）を10秒間手で回し、最高時速を計測します。

人が行っている様子を見ると簡単そうに思えますが、実際にやってみると必死で手を動かしてもなかなか速度が上がらないもの。この日の参加者の最高タイムは「男性：22.1km/時」「女性13.3km/時」「男子：14.3km/時」「女子：12.3km/時」。目安として記載されていたパラアスリート記録の「男子：40km/時」「女子：38km/時」とはタイムに大きな差がありますが、この日の男性部門で1位を記録したのは車椅子アーチェリーの経験者で日常的に車椅子に乗り慣れている方。健常の参加者が時速10km代を記録する中、この日唯一の時速20km代をマークし、会場内からどよめきが湧き上がりました。

「レーサーは自転車と違い、足を使わず腕の力だけで進みます。これは一度体験しないとイメージが湧かないのではないでしょうか。パラアスリートの実力を実感してもらえたらうれしいです」と、このコーナーのサポートをしてくださった1988年ソウルパラリンピックで陸上競技スラロームで金メダルメダリストの永尾由美さん。
実際に、体験した方は「たった10秒間だったのに腕が痛い」「これで時速38〜40km出せるなんて」と驚いていました。

VRで車いすフェンシング体験

VR（仮想現実）を活用して競技を擬似体験できるようにしたコーナーもありました。それは、固定位置から相手を剣で突いてポイントを競う車いすフェンシング。剣を使うので実際に行うとなると慎重に安全対策を練る必要がありますが、VRならば初心者でも安心して体験できます。

車いすに乗ってVRゴーグルをかぶると、目の前に現れるのは2008年北京オリンピックでフェンシング銀メダリストの太田雄貴さん。相手の突きが当たると画面が赤に、こちらの突きが当たると緑に光ります。太田さんが一瞬で間合いを詰めてこちらに迫ってくるので、動きをよく見て素早く自身の体を左右にかわし、確実に胴体を狙ってコントローラーを前に出す必要があります。

車いすフェンシングは相手との距離が近く、フットワークによる駆け引きが使えないため、集中力や精神力、そして瞬間的な判断力が求められるもの。VR空間上での擬似体験でもその緊張感やスリリングな魅力を垣間見ることができたのではないでしょうか。体験後、「車いすフェンシングの試合を見てみたい」と感想を語っていた方もいました。

その他

大体育館へ続く会場の通路には展示コーナーを設け、パラスポーツやデフリンピックの概要や魅力などを紹介しました。視覚障害のスポーツであるゴールボールのパネルの前には、競技で使う鈴が入ったボールも展示。子どもたちは興味深そうにボールを手に取り、音を鳴らして遊んでいました。
2025年に東京で開催されるデフリンピックの紹介パネルも目を引いており、通りかかった家族連れが「日本で開催されるみたいだよ」と足を止めて説明を読む姿も見られました。

体験や展示を通してパラスポーツの魅力を伝える「TEAM BEYOND パラスポーツ体験プログラム」。これまでパラスポーツに馴染みがなかった方に関心を持っていただくきっかけになったのではないかと思います。

次回は9月21日（土）に開催される「荒川スポセンフェスティバル」（会場：荒川総合スポーツセンター）にて実施します。ぜひご参加ください！

パラスポーツ体験プログラムでは、スタンプラリーを実施しています。集めたスタンプ数に応じてオリジナルグッズをプレゼント！皆さんの参加をお待ちしています！

・スタンプラリーの詳細はこちら↓
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