支援企業・団体の声
株式会社ゼネラルパートナーズ
2025.3.28
強みは「当事者」目線、知的障がいのパラアスリート支援にも挑む企業の可能性
「社会問題をビジネスで解決する」という理念の下、2003年に進藤均(しんどう ひとし)社長が創業したゼネラルパートナーズ(GP)は、障がい者の就職・転職ならびに就労移行支援を中心に事業を展開しています。
同社が手掛けるサービスの特徴の一つが、障がい等の診断別にコースを設定している点です。就労移行支援事業所「atGPジョブトレ」では、「うつ症状コース」「発達障害コース」「統合失調症コース」「聴覚障害コース」「難病コース」を用意し、それぞれの特性に合わせた支援を行なっています。10年以上前からこうした取組を継続している事業所は、国内の障がい福祉サービスとしては珍しいといいます。
「当然、支援の難易度は高いですが、同じ困りごとを持っているからこそ、普段は言えないことをお互いに言えて、そこから自分らしさを取り戻していく。それが私どもの福祉サービスで実現できていることです」と、約20年のソーシャルワーカー経験を持つatGPジョブトレ シニアマネージャーの虫生玲(むしう れい)さんは胸を張ります。

現在、12事業所全体で年間約500人の利用者が在籍し、昨年度は140名の就職者を出すことができました。
障がい別に、オフィスワークを想定したスキルと経験が積めるコースや、未経験からでもWebデザイナー・プログラマーが目指せるコースなど、特性や時代のニーズに応じた支援を提供しています。
障がい者の研究機関立ち上げや、大学との連携も
また、長きにわたる支援の実績を基に、同社は調査・研究機関である「障がい者総合研究所」を設立。当事者の声を集め、社会に発信する活動を展開しています。約2000人のモニターの協力を得て、障がい者の就労に限らず、出産・子育て、差別など、さまざまなテーマについての調査や研究を実施しています。
「当事者の声を形にして発信するという仕組みは、当時はほとんどありませんでした。実際にアンケート調査で声を集めてみると、社会に発信する方法を知らないだけで、当事者の方々は、自分たちの思いを伝えたいという強い願いを持っていることがわかりました」と、コーポレート本部 広報室 室長の戸田重央(とだ しげお)さんは説明します。

そのほか、atGPジョブトレ大手町の聴覚コースでは企業における障がい者雇用促進を目的とした体験型コンテンツ「オフィス版聞こえない・聞こえにくい体験」の開発のため、東京工科大学メディア学部吉岡研究室と連携。「聴覚障がいの方の就職は、一見するとハードルが低いように見えます。しかし、それはある意味、企業の聴覚障がい者の困難さが分かりづらいことから生まれるもので、実際には聞こえ方や日本語の習得度、コミュニケーションスキルは個人差が大きく、採用後に企業側も戸惑うことが少なくありません。そこで、元々聞こえない体験、聞こえづらい体験を開発されていた吉岡先生に企業にも実感いただくようなツールを展開できないかとご相談させていただいたんです」と虫生さんは力を込めます。
2025年度からはこのツールを使用したワークショップや研修を実施できるよう吉岡研究室と計画中です。
就職支援したパラアスリートたちの活躍
このように障がいのある人たちが働ける機会を次々と作り出している同社が約7〜8年前から注力するのが、パラアスリートの就職・転職支援です。
この取組は一人の若手社員のアイデアがきっかけでした。学生時代からスポーツビジネスに携わりたいという強い思いを持っていた社員が、「障がい者×スポーツビジネス」という観点からパラアスリートの就職支援事業を提案。それが社内で承認され、現在の「atGPアスリート」などのサービスにつながりました。
特に注目すべきは、知的障がいのあるアスリートの就職支援に取り組んでいることです。これまでに水泳、陸上、サッカーといった競技で活躍する選手がGPを通じて企業に入社しました。例えば、株式会社ビーズインターナショナルに所属する村井海人(むらい かいと)さんもその一人。ダウン症の村井さんは国際的なトップスイマーで、2024年にトルコで開かれた「第11回世界ダウン症水泳・アーティスティック選手権大会」にて、50メートル背泳ぎで日本人男子初の銅メダルを獲得。また、米国で行われた「USADSS & AWL 2024 Open National Swimming Championships(2024全米オープン水泳選手権)」では、50メートル背泳ぎ(Ⅱ-2 Open Class)で金メダルに輝きました。
「知的障がいのアスリート支援は他社の人材エージェントではほとんど例がありません。しかし、適切なサポート体制があれば十分に活躍できることを、実績で示すことができています」と、atGP事業本部 atGPキャリア部門 事業サポートグループの矢嶋志穂(やじま しほ)さんは語ります。
「当事者」であることの強み

同社によるパラアスリート就職支援の強みは、自身もパラスイマーである矢嶋さんの存在が大きいでしょう。競技経験だけでなく、就職した職場での体験など、当事者にしか分からないことを支援に反映できているのです。
「私が聴覚を失った時はコミュニケーションの問題ですごく悩みましたし、今の会社では初めての車いす使用の社員だったので、皆が変に気を遣ってくれて、互いのぎこちなさを生みだしていました。そういった当事者ならではの悩みを共有できますし、賃金など皆さんが気になさることも正直にお伝えしています」(矢嶋さん)
パラアスリートの就職支援に際しては、本人の競技活動とキャリア形成の両立を重視しています。例えば、ある企業で働くパラアスリートは、週に1回本社業務を経験する機会を設け、将来を見据えたスキル習得にも取り組んでもらっています。「知的障がいの方の場合、生活リズムの維持や収入面での不安など、ご家族の心配は大きいですし、競技引退後のセカンドキャリアはより重要だと考えています」と矢嶋さんは強調します。
そうした観点で、パラアスリートが企業に就職した後のサポートも充実させています。競技用ユニフォームのロゴの規定サイズ確認から、食事やサプリメントの相談まで、きめ細やかなサポートを行っています。矢嶋さんはアスリートフードマイスターの資格を持っており、栄養面での具体的なアドバイスもできるのです。
最近では、2028年ロサンゼルスパラリンピックから追加競技となるパラクライミング、海の競技として注目の高いパラサーフィンの選手もGP経由で企業に採用されるなど、支援の範囲は広がりを見せています。
さらに、同社の支援を受けて採用された選手たちの活躍が、新たな採用につながるケースも出てきています。「一人の選手の成功事例が、企業の意識を変えるきっかけとなっています。『知的障がいがあっても出来ることはたくさんあります』という気付きが『現場に行く・声を聴く・競技を知る・観戦する』につながり、次の採用への道を開いています」と矢嶋さんは手応えを感じています。
パラアスリートの採用意欲は高まっているが
パラスポーツやパラアスリートに対する認知は、企業の中でも確実に高まっていると思います。とりわけ「東京2020パラリンピック」を契機に、その機運は強まっているようです。
「障がい者雇用の一環としてパラアスリート採用を検討するなど、企業側から自発的に相談をいただくことが増えました」と、atGP 事業本部 atGP キャリア部門 事業サポートグループ シニアマネジャー 斎藤雅邦(さいとう まさくに)さんは説明します。

ただし、課題も存在します。「企業側が求めるのは、どちらかというと企業イメージの向上に貢献できる競技専念型のアスリートです。トップレベルで活躍する選手を採用したがる傾向が多いなと感じています」と斎藤さんは指摘します。
また、アスリート側の認識にもミスマッチがあるといいます。「例えば、全国障がい者スポーツ大会で金メダルを獲得したから、すぐにアスリート採用されるだろうという期待を持つ方もいます。しかし、アスリート採用にはさまざまな要件があり、誰もが対象となるわけではありません。その説明と理解を得ることも私たちの重要な役割となっています」と矢嶋さんは話します。
障がいの有無に関係なく、誰もが活躍できる
GPの創業は進藤社長の個人的な経験に根ざしています。障がいがある妹との生活を通じて、社会に存在する「見えない壁」の存在に気付き、その解消に向けて行動を起こしたことが始まりでした。
「障がいの有無に関係なく、適材適所であれば誰もが活躍できる」という進藤社長の信念は、長年にわたって揺らぐことなく受け継がれています。こうした考え方に共感して入社する社員も多く、それが事業継続の原動力となっています。
一方で、業務の専門性が高いことから、属人的になりがちな側面もあります。特にパラアスリート就職支援サービスについては、個人の経験やスキルに依存する面が大きいことが指摘されています。
「当社としてはあくまでもパラアスリート以外の障がい者の方々の雇用支援がメインです。従って、パラアスリートの支援についてはまだ足りていないところが多分にあります。会社としては伸びしろだと言えなくもないですが、メインプロダクトとのバランスをいかにとっていくかが今後のテーマです」と斎藤さんは打ち明けます。
ただし、こうした事業課題に向き合いながらも、障がい者雇用の新たな可能性を切り開き続けるGP。「誰もが自分らしくワクワクする人生」というビジョンを具現化するべく、これからも革新的な取組を続けていくことでしょう。

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