支援企業・団体の声
株式会社コロプラ
2025.3.13
アスリート雇用が生んだ感動、従業員エンゲージメントを高めたパラリンピック
世界初の位置ゲー「コロニーな生活」、本格3DアクションRPG「白猫プロジェクト NEW WORLD’S」、スクウェア・エニックス社と共同開発した「ドラゴンクエストウォーク」などのスマートフォンゲームや、コンシューマー向けゲーム(家庭用ゲーム機でプレイできるゲームのこと)など、数々のヒット作を生み出している株式会社コロプラ。いまや事業は海外へと広がっています。
このように気鋭のIT関連企業であるコロプラが、パラスポーツに精力的であることをご存じでしょうか。現在は、パリパラリンピックで金メダルに輝いたゴールボールの宮食行次(みやじき こうじ)選手、車いすバスケットボールの赤石竜我(あかいし りゅうが)選手および柳本(やなぎもと)あまね選手が所属し、これまでにのべ10人とパラアスリート契約を結んでいます。
コロプラがパラスポーツに力を入れる理由、それが社内にもたらした影響などについて聞きました。
全社で健康経営に注力
従業員の約8割がクリエイターだというコロプラ。同社がこれまでスポーツや運動に無縁だったかというと、実はそうではなく、創業以来、「健康」をキーワードに掲げてきました。
「従業員に安心して長く働いてもらうためには健康でなければならないといった考えを経営メンバーが持っています。従って、健康診断の受診率100パーセントなどを当初から目標にしていましたし、メンタル休職の人数を減らすなどの努力もしてきました」
同社経営企画本部 人事部 安全衛生グループの前出瞳(まえで ひとみ)さんはこう語ります。

ただし、企業規模が大きくなるにつれ、病気になる従業員、さまざまな理由で休職・離職をする従業員などが増えていきました。そうした変化に伴い、より本腰を入れて「健康経営」に取り組むことに。数年前には人事部の下に「安全衛生グループ」が設けられました。
このグループは従業員の健康管理をメイン業務とし、健康診断の実施や産業医とのやり取り、ハラスメントなど各種相談窓口の対応などを行なっています。そのほか、従業員が長く働き続けられる会社作りも広い意味での安全衛生と捉え、従業員の育児、介護、疾病などの両立支援も担当しています。
「世の中で健康経営が脚光を浴び、当社も一層力を入れていこうとなりました。そのためには担当者が一人で頑張るといった形ではなくて、しっかり会社全体で力を入れる必要があると考え、組織化したわけです」と看護師の資格を持つ前出さんは語ります。
取組の成果は現れており、経済産業省と日本健康会議が共同で運営する健康経営優良法人認定制度において、「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されました。「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定は、2021年より4年連続となります。また、「長く働く」という観点では、在職率も以前と比べて伸びているといいます。
「認定が欲しくて体制を整えたのではなく、前向きに取り組んでいたら評価されたというのが事実です」前出さんは付け添えました。
パラアスリートにも帰属意識を持たせる
健康経営に加えて、コロプラが力を注ぐのが「ダイバーシティ」の推進です。その一環として、かねてより障がい者の支援に力を入れていました。そこからどのようにパラアスリート採用へとつながったのでしょうか。
「きっかけは障がい者雇用率のアップです。3人の視覚障がい者の方がヘルスキーパー(企業内理療師)として常駐していますが、それだけにとどまらず、もっとエンタメ企業らしい障がい者雇用を考えていこうとした際に、パラスポーツの可能性を考えました。そこから既にパラアスリートを支援している会社などにお話を伺ったところ、当社と親和性が高いと実感しました。スポーツはエンターテインメントですし、人に感動を与えるといった点でも、エンタメ企業として当社が求めていることでした」(前出さん)
2018年に会社として初めてアスリート社員制度を立ち上げ、雇用に踏み切りました。結果、3人のパラアスリートが同社の門を叩きました。その一人が、車いすバスケットボール選手だった藤澤潔(ふじさわ きよし)さんです。当時のことを次のように回想します。

「私の場合はJOC(日本オリンピック委員会)の『アスナビ』というアスリート就職支援制度でコロプラに出会いました。元々、東京パラリンピックを目指していましたので、そこに向けてより競技に集中できる環境を求めていました」(藤澤さん)
藤澤さんは、それまでは別の会社でフルタイム勤務していたといいます。
「ご承知の通り、パラスポーツも昨今、競技レベルがどんどん上がっていますので、実際、働きながらトップアスリートを目指すのは非常に難しい問題でもあると思うのです。私自身、人生を賭けて勝負に出たい、何とかして競技環境を整えたいと考えていたところ、ちょうどコロプラが障がい者雇用やダイバーシティ推進に舵を切るタイミングだったこともあり、ご縁があって入社できました」(藤澤さん)
他方、コロプラ側が重視したのは、パラアスリートに「帰属意識」を持ってもらうことでした。競技に100パーセント打ち込める環境を提供するため、基本的に選手は通常業務を行いません。すると、どうしても他の社員との交流は生まれませんし、選手としても会社に所属している意識が薄れてしまいがちになってしまいます。それを回避するために、必ず月に1度は出社日を設けるようにしました。
「例えば、出社した時に自分の競技内容やキャリアを皆さんに話す機会を作ろうと、ランチを食べながら気軽に聞ける場を用意しました。あとは、オフィス内に『コロパーク』というコミュニケーションエリアがあるので、バトミントンやアーチェリー、車いすバスケといったパラスポーツの体験会も開きました。創業者の馬場{取締役会長 チーフクリエイター 馬場 功淳(ばば なるあつ)}もやってきて、一緒にプレーしましたね」(藤澤さん)

同じ会社の仲間だからこその感動
このように、パラアスリートと社員との距離を近づけたことで、応援のヒートアップにもつながりました。それが形となって現れたのが、2021年の東京パラリンピックです。
同大会はコロナ禍による無観客試合。さらに社内でも一堂に会するパブリックビューイングなどは中止していたため、全社員に応援グッズを送り、それぞれが自宅で観戦することになりました。


藤澤さんが選手として出場した車いすバスケ男子は、見事銀メダルを獲得。前出さんは目頭を熱くしながらこの瞬間を見届けました。
「日の丸を見上げてメダルをもらい受けているシーンにグッときました。ずっと応援してきたので、本当に良かったなと。普段の頑張りを知っているからこそ、ただの一観客ではなくて、仲間として心から感動しました」(前出さん)
子どもと一緒にテレビを見ていた前出さん。画面に藤澤さんが映るたびに「この選手はうちの会社の人だから」と誇らしげに語ったそうです。
なお、2024年のパリパラリンピックにも、同社のパラアスリートが出場。その時にはこんなことがあったと明かします。
「パリのときには社内でパブリックビューイングを行い、ゴールボールの宮食が金メダルを取りました。メダルを取った翌日だったでしょうか、わざわざ私宛にチャットをくれる従業員もいました。『パラアスリートを採用し、支援している会社に対してすごく感謝しています』といった内容でした」(前出さん)
ただ単にメダルを取ったことに対して喜ぶのではなくて、世界と戦うパラアスリートと同じ仲間として一緒にいるということが、会社へのエンゲージメントにつながり、さらなる感動や新しい体験を届けるのだと前出さんは実感しました。
アスリートのキャリア形成を支援
東京パラリンピック後、藤澤さんは現役を引退しましたが、そのままコロプラで働いています。世間一般では競技をやめると雇用先を退職せざるを得ないアスリートも少なくない中、藤澤さんは経験や能力を買われ、社員として会社に残ることができました。このことに感謝をしつつ、自分しかできない役目を果たしています。

「競技引退後のキャリア形成について、事前に会社としっかり話をさせてもらい、アスリートの支援側に回る、今のようなポジションを検討していただきました。このような流れを会社としても初めて作ってもらえたことは、非常に価値があることだと考えています。それこそ障がいがあろうがなかろうが、社会で活躍できる場所があることの証明にもなったのかな。他のパラアスリートたちにとっても一つのロールモデルや選択肢ができたと思います」(藤澤さん)
現在は安全衛生グループで働く藤澤さん。現役パラアスリートのサポートも重要な役割となっています。
所属のパラアスリートとは基本的に月2回、月初と月末に面談をして、競技目標や会社に対する考えなどをヒアリングしています。当然、業務的な部分、例えば、「会社でこういう研修があるからちゃんと受けてください」といったやり取りもしています。一人ずつ必ずコミュニケーションをとり、双方の思いをしっかりすり合わせ、対話をすることが大切だと強調します。
「トップアスリートであると同時にコロプラの社員だよねっていうことは絶対に忘れてほしくない。例えば、提出物の期限を守るなど、社会人が当たり前のようにやっていることに対して、同じような感覚を持ってもらいたいです。そういったこともきちんと伝えられる関係でいたい」(藤澤さん)
一方で、選手のメンタルケアにも一役買っています。これは自身の体験も大きかったと藤澤さんは述べます。
「私自身も現役時代、怪我で相当迷惑をかけましたが、その時にしっかりとサポートしていただいて、雇用契約などの面での不安を解消してもらいました。そういうところも含めて一緒に伴走いただいたので、今の選手も不安を感じたり、落ち込むようなことがあれば、少しでもフォローできたらと考えています」
今後もパラアスリートの雇用に力を入れていくコロプラ。競技引退後のキャリアまで見据えたフォロー体制のもと、新たなパラリンピアンの登場も、そう遠くないのではないでしょうか。

株式会社コロプラ
担当部署 | 経営企画本部 人事部 安全衛生グループ |
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