支援企業・団体の声
株式会社東京ユナイテッドバスケットボールクラブ
株式会社東京有明アリーナ
サントリーホールディングス株式会社
一般社団法人NO EXCUSE
2024.7.26

『サントリー ドリームアスリート体験会』
車いすバスケットボールの聖地「有明アリーナ」でTUBC、NO EXCUSEとともに
小中学生に体験会を続ける意義

「位置について、よーいどん!」

コーチ役の男性が号令をかけると、車いすに乗った子どもたちが一斉に前へ進み出しました。スムーズにターンを決めて戻ってくる児童もいれば、コースアウトしそうになりながらフラフラと斜めに進んでしまう児童もいます。ただし、うまくできても、できなくても皆笑顔。和気藹々(あいあい)と楽しんでいる様子が見てとれます。

ここは東京都江東区にある「有明アリーナ」。小学生向けに車いすバスケットボールの体験会が開かれていました。これは毎月開催されており、取材した日は有明小学校の4年生100人ほどが授業の一環として2コマに分かれて参加していました。

この体験会は、施設の運営会社である株式会社東京有明アリーナ(以下、東京有明アリーナ)のほか、東京ベイエリアを中心に活動するプロバスケットボールチーム「東京ユナイテッドバスケットボールクラブ(以下、TUBC)」、車いすバスケットボールチーム「NO EXCUSE」、そしてサントリーホールディングス株式会社(以下、サントリーHD)の4者が共同で企画しています。

なぜこのような取組を始めたのでしょうか。そして具体的な手応えは。関係者に話を聞きました。

(左から)サントリーHD 橋爪(はしづめ)崇 CSR推進部部長
東京有明アリーナ 人見(ひとみ)秀司 代表取締役CEO
TUBC 干場(ほしば)一広 取締役副社長

レガシーを残したい

車いすバスケットボールの体験会がスタートしたのは2022年9月。有明アリーナが開業してわずか1カ月後のことでした。

有明アリーナは、東京2020オリンピック・パラリンピックの会場として2019年12月に竣工。バレーボール男子・女子や、車いすバスケットボール男子の試合が行われた、「聖地」とも言える場所です。大会後は施設のレガシー活用を推し進めるべく、民間企業が事業を展開しています。即座に体験会を実施した背景を、東京有明アリーナの人見秀司代表取締役CEOは次のように語ります。

「銀メダルまで獲得した車いすバスケットボールのレガシーをきちんと残したいと考え、車いすを10台購入し、体験会を月1回ペースでやることは、実は当初から決めていました。施設・運営管理の業務委託契約は一応25年間なんですけど、(体験会も)最後までやり切る腹づもりでプロジェクトを進めました」

ホームタウン活動などを通じて小中学校と接点ができる

とはいえ、単独では難しいはず。とある縁で、TUBCやNO EXCUSEとのつながりができました。また、サントリーHDは有明アリーナのオフィシャルクラブパートナーであり、以前から同社はパラスポーツの取組にも積極的だったため、仲間に巻き込むことは自然の流れでした。

では、それぞれどのような役割を担っているのでしょうか。「TUBCは地域密着をテーマに、2021年の発足以来、近隣の学校での課外授業などを行っていました。従って、この活動に対しても親和性が高いと感じています」株式会社東京ユナイテッドバスケットボールクラブの干場一広取締役副社長が説明します。

「私たちは地域と共にゼロから作るバスケットボールクラブとして立ち上がりました。最初は全然知名度がありませんでしたが、試合をしていくうちにだんだんファンが増えてきたのと同時に、有明アリーナを主要活動場所とするホームタウン活動によって、この地域と多くの接点が生まれました。今、体験会にご案内しているのは、私たちが直接出会ったり、あるいは教育委員会やPTAの方々につないでもらったりした学校です。やはり有明アリーナはパラリンピックで車いすバスケットボール男子日本代表が銀メダルをとったこともあり、近隣に住む人たちにとってもその印象が強いようです」

NO EXCUSEは体験会のコーチ役として、選手たちがサポートに関わっています。サントリーHDは体験会用の車いすを提供するなど、主に体験会全般をスポンサードしています。そこには同社のこれまでの知見も生かされています。

「2014年に東日本大震災復興支援の一環で、『チャレンジド・スポーツ支援』を始めました。活動の一つとして、車いすバスケットボールチームの宮城MAX、ラッセル岩手、TEAM EARTH(福島)の選手と一緒に被災地の小中学校に赴き、子どもたちに車いすバスケットボールを体験してもらう取組(アスリート・ビジット)があり、約6年間継続するうちに、パラスポーツを通じて共生社会を実現したいと考えるようになりました。そのために、東北でやってきたことを全国に広げたい、まずは有明アリーナから始めよう、と考えました」と、サントリーHDの橋爪崇CSR推進部部長は振り返ります。

長く続けるため、課題に取組む

この4者で体験会を始めて2年近く経ちますが、最初から順調だったわけではありません。当初は平日夜開催で、大人も子どもも関係なく希望者が参加する形でした。ただし、そのやり方だと対象の幅が広すぎて、体験プログラムのクオリティにバラつきがありました。

そこで、2023年4月からは体験プログラムの提供先を江東区の小中学校に限定することで、プログラムの均質化に取組みました。学校への案内は、教育委員会やTUBCを中心とする繋がりから行っており、実施を希望される学校数は着実に増えつつあります。

いざ体験会が始まれば、中身のコンテンツに対する満足度は非常に高いと、関係者は口をそろえます。「ぜひ、また体験会をやってほしい」と学校から言われることも多いとのこと。子どもたちが多様性を学ぶうえで、この体験会がとても貴重な経験になったと感じる方が多いようです。

実際に子どもたちを指導するのがNO EXCUSEの選手たちで、そのリーダーが香西(こうざい)宏昭選手です。車いすバスケットボール日本代表の香西さんは2008年のパラリンピック北京大会から4大会連続で出場。海外でもプロ選手として活躍した、押しも押されもせぬ日本代表のエースです。そんなトップアスリートは、体験会のどのあたりにやり甲斐を感じているのでしょうか。

「子どもたちと一緒に活動する中で、応援の言葉をもらったり、今度試合を見に行きたいですと言ってくれたりするのは嬉しいですね。そうそう、バスケがよほど楽しかったのか、車いすを買いたいと話していた子もいて。『サンタに頼もうかな?』と言うから、『サンタ“さん”を付けないともらえないよ』と教えてあげました(笑)」

お互いに理解するきっかけにしたい

また、この体験会は「ダイバーシティ」を考える上でも大きな意義があると言います。

「健常者と障がい者と分けた時に、マイノリティに思われてしまうことがあります。ところが、いざ車いすに乗ってみると(健常者である)皆のほうがうまくいかず、逆に僕らは何の問題もなくガンガン動き回ることができる。こういう体験をすることはすごく大切だと思います」

香西さんは続けます。

「だからパラスポーツを通じて、まずは知ってもらう、楽しんでもらうことは大事。障がい者、健常者関係なく、お互いに知らないことはいっぱいあるし、理解し合えることもあるかもしれない。対話をするきっかけになるといいですよね」

さらには、体験した子どもたちが家に帰って家族に報告することで、子から親へのリバースエデュケーションが生まれる、と香西さん。

また、体験会に参加した子どもから、「僕の方がマイノリティだよ」と言われることもあるとのこと。障がいは決して特別なことではないということを、パラスポーツを通じて、子どもたちが理解した結果かもしれません。

体験会というイベントだけで終わらせないために

試行錯誤を繰り返しながらも、ようやく安定した運営ができるようになった体験会ですが、今後に向けた課題もいくつかあります。一つは深い学びにつなげることです。干場さんが訴えます。

「今はどうしても『体験して楽しかったね』で終わってしまっています。だからもう少し事前学習や事後学習を充実させるプログラムを考えています。その先に、共生社会を学ぶようなところまで持っていくことができればいいと思っています」

現在は香西さんらが登場する車いすバスケットボールの動画を、前もって視聴しておいてもらう程度。それに加えて、プリントワークなどで先に学ぶ機会を作りたいと干場さん。

「いきなりこうやってくれと言われても、学校側も分からないと思うので、体験会だけではなく他にも学習してほしい内容をすべてパッケージにしてお渡しすれば、学校も取組みやすくなるかなと思います。また、私たちだけではなくて、教育委員会や地域の方々とも協力して大きな仕組みを作っていきたいです」

関連して、学校へ呼びかける方法も変えていきたいと言います。今は個別にご案内していますが、例えば自治体と一緒に事務局を作り、教育委員会経由でご案内するようにすれば、一層この地域ならではの、特色ある学習プログラムになるはずだと干場さんは力を込めます。

もう一つの課題は、他の地域に広げる活動です。

「こういった体験会を実施するのに重要な要素は、会場、講師、車いすの三つです。車いすの使用を許可している会場は限られていますし、車いすでのスポーツを指導できる講師も多くはありません。多くの車いすを運搬するには、トラックの手配が必要となります。他のエリアで行うには、この三つが揃わなかったり、多くのコストがかかったりするわけです。そこで例えば、地域の障がい者スポーツ協会やチームが持っている資産やネットワークを活用できれば、実現の可能性が高まるかもしれません。そういうことを一緒にできるパートナーがいれば、さらに拡大していきたいですね」(橋爪さん)

6月初旬には初めて中学校でも体験会も実施しました。当面は江東区の小中学校を順番に当たっていき、まずは区内に「しっかり浸透させたい」(橋爪さん)と意気込みます。

そのためには、限られたリソースではありますが、1日午前と午後で2回行い、開催数を増やしたり、事前・事後学習の機会を設けて教育的価値の向上を図りたいと考えています。

今回は、4者連携の体験会のお話を伺いましたが、その他パラスポーツを応援する取組はいろいろ。有明アリーナでは、東京2020オリンピック・パラリンピック以前から続けている江東区主催のボッチャ大会を開催。サントリーHDは「パラスポデザインカレッジ」という大学生との共創により、パラスポーツの魅力を発信する活動を続けているそうです。

東京中が熱狂の渦に包まれたあの夏から早3年。東京2020オリンピック・パラリンピックのレガシーを未来に継承するため、これからも車いすバスケットボールの体験会は続いていきます。

株式会社東京ユナイテッドバスケットボールクラブ
住所 〒135-0063 東京都江東区有明一丁目1番6号 共和物産株式会社有明センター内
電話 03-6897-5903
URL https://tubc.tokyo/
株式会社東京有明アリーナ
住所 〒135-0063 東京都江東区有明一丁目11番1号有明アリーナ施設内
電話 03-6380-7860(代表)
URL https://ariake-arena.tokyo/about/
サントリーホールディングス株式会社
担当部署 CSR推進部
住所 〒135-8631 東京都港区台場二丁目3番3号
電話 03-5579-1000(代表)
URL https://www.suntory.co.jp/culture-sports/challengedsports/
一般社団法人NO EXCUSE
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