支援企業・団体の声
株式会社CAC Holdings
社屋にコートを設置、競技用アプリの開発
ボッチャへの独自の普及活動の実施
ITサービスやヘルスケアサービスを展開する株式会社CAC Holdings。同社は日本ボッチャ協会のゴールドパートナーとして、協会の活動の支援を行いながら、ボッチャボール間の距離を測るアプリの開発や、社屋にボッチャ専用のコートを設けるなど、独自の普及活動を展開しています。
創業50周年を機にボッチャの支援を開始
同社がボッチャの普及・支援活動を始めたきっかけについて、説明するのは、経営企画部 Enterprise Value Upグループ長 兼 CACグループ ボッチャ支援事務局長の酒井伊織さんです。
「当社では以前からパラスポーツの支援を行っていましたが、スポンサーとして出資をしていただけで、具体的な活動は何もしていませんでした。」(酒井さん)
そんな状況に変化が生まれたのは、2016年。同社の創業50周年を機に、社会貢献につながる事業を展開していきたいという経営陣の想いからスタートしました。
2015年ごろから支援の対象を何にするか、社内での検討が始まりました。パラスポーツだけでなく、幅広い分野から候補が挙がったそうです。その中から選ばれたのがボッチャでした。
「すでに多くの企業から支援を受けている競技では、できることが限られてしまいます。そこで、まだ誰も支援していない競技にしよう、ということになりました。」(酒井さん)
社内の担当者が、ボッチャの大会や練習を見学に訪れ、協会員や選手、その保護者とコミュニケーションを取る過程で、障がいの重い人たちでもプレーできるボッチャの素晴らしさに気づいたそうです。社長自身が大学時代にスポーツ関連のボランティア経験があったことも決め手でした。
「タイミングもよかったです。」と話すのは、株式会社シーエーシーの経営統括本部 経営企画部 広報グループの近藤奈都子さん。
「ちょうど支援をはじめたのが、2016年でした。ボッチャの日本チームが銀メダルを獲得したこともあって、知名度が一気に広がったんです。より当事者意識が湧きましたし、外部からの反響もよくて、うまく波にのることができました。」(近藤さん)
支援を開始してからは、競技大会に運営ボランティアとして参加するなど、現場での活動を重ねていきました。その経験を形にしていきました。
近年では、日本ボッチャ協会のゴールドパートナーとして、ボッチャ大会の主催、パラアスリートの雇用、普及啓発活動など、幅広い取組を実施しています。
中でも特徴的なのが、同社の事業を活かして開発された、ボッチャボール間の距離を自動測定するAndroidアプリ「ボッチャメジャー」。そして、社屋の1階に設けられた「CACボッチャコート」です。このコートはアスリートの練習に使われるだけでなく、一般開放していて、予約をすれば誰でも利用することができます。
社員研修にボッチャを採り入れて認知拡大
企業としてパラスポーツの支援活動を推進するうえで、社員を巻き込んでいくことも重要です。長期に亘る取組の甲斐もあり、社内でのボッチャの認知度はかなり高いそうです。社員に向けた活動について、説明するのは、経営企画部 Enterprise Value Upグループ 兼 ボッチャ支援事務局の稲垣義則さんです。
「当社では新人研修プログラムにボッチャの体験会を組み込むなど、社内のイベントで定期的にボッチャを導入しています。グループ社員であれば、ボッチャのルールは知っているでしょう。」(稲垣さん)
支援を始めた2016年当時は、社内でボッチャのルールを知っている人はいませんでした。その状態から、社員の興味を喚起して、粘り強く継続することで現在に至りました。関心を持ってもらうためには、まず何よりも実際に体験することが重要と考え、当初はボランティアの時間を業務時間として扱いました。そうして、社員一人ひとりが、ボッチャとの接点を増やしていきました。
20社ほどあるCACグループ会社全体に声をかけたことで、これまでに会ったことのない社員と知り合うきっかけにもなり、社内でのチームワークの醸成にもつながったそうです。
こういった活動を続けていくことで、社員の心境にも変化が見られました。会社が支援している競技として、パラスポーツを身近に感じることで、障がい者との関わり方への興味・関心を持つ社員も増えてきています。
「私自身、かつては障がいのある方に対して『自分のような素人が関わってはいけないな』と思っていたのですが、ボッチャの支援を通じて、いろいろなことを学びました。街の中でバリアフリーの案内が目に留まるようになったなど、意識が変化していることを感じます。」(稲垣さん)
2018年には、ボッチャのアスリートである佐藤駿選手を雇用しました。佐藤選手が勤務するフロアでは、周囲の社員がすすんでドアを開けるようになるなど、意識の変化は行動にも表れています。
ITサービスを事業とする同社では、実際に取引先やユーザーと触れ合うのはごく一部の社員のみ。そういう意味では、自分たちがボッチャの支援をすることで生まれた“声”を直接聞く機会は、多くの社員にとって貴重だったとのこと。それが支援活動に取り組むモチベーションにもつながっているようです。
まずは「体験してみること」から始める
パラスポーツの振興を企業として行うなら、「まずやってみること」が重要だと、皆さんは口を揃えていいます。
「パラスポーツだからと身構えるのではなく、まずは『一緒にやってみること』が大事です。自分たちが思っている以上に、皆さん歓迎してくれます。壁を作らず一緒に楽しんで、いろいろ知ったうえでサポートする方がうまくいくと思います。社員には、ほとんどゼロの状態から始めて、今ではボッチャの審判員の資格を持っている方もいます。」(稲垣さん)
「審判員を輩出し、オフィス内にコートを作った当社のような企業は多くないでしょう。長期に亘ってそのスポーツと関わるためには、金銭的な支援だけで終わるのはもったいないです。」(酒井さん)
「ボッチャは障がいの有無に関わらず、誰でも楽しめるスポーツです。基礎体力を鍛える必要もなく、道具さえあればどこでもプレーできますから、気軽にはじめてみるといいと思います。」(近藤さん)
近年、ボッチャの知名度は高まっており、体験するチャンスは確実に増えています。まずは実際に体験してみて、その魅力に触れることから、次のステップに進むのが近道なのでしょう。
今後もボッチャを主軸に、さまざまな活動を展開
「さまざまなスポーツの支援ができれば理想なのですが、ボッチャにはまだまだ深く関われる余地があります。当面はボッチャ支援に注力していきます。」(酒井さん)
同社がこれまで毎年主催していたボッチャの学生交流戦「CACカップ」ですが、2020年は新型コロナウイルスの影響により中止になってしまいました。今年の開催も状況次第でどうなるかは未定とのこと。
ただ、2年続けて中止にしたくないという想いは強く、オンラインを駆使するなど、形を変えての開催も含めて検討しているそうです。完全リモートではなく、できるだけ対戦形式でコミュニケーションの取れる形を模索しています。今後の大会の動向に注目です。
大会を主催する一方で、同社はボッチャの裾野を広げる活動も行っています。小中学校や企業に向けて、ボッチャの体験プログラムを提供しています。こちらもコロナ禍で開催数は減ってしまいましたが、オンライン環境で実施するなど、新しい生活様式に合わせた普及活動を推進しています。
「以前、お店で食事をしていた時、ふと隣の席から『今度のイベント、ボッチャってスポーツがあるんだけどどうかな?』という話が聞こえてきて、浸透していることを実感しました。その方々は高齢者だったのですが、ボッチャ特有の多様性には可能性を感じています。」(近藤さん)
同社がここまで活動を続けてこられたのは、支援するスポーツを絞って、親身になってやり切ってきたからだと稲垣さんはいいます。
「初めてボッチャ大会の見学に行った日に、人手不足だった協会のスタッフさんに『受付をお願いします』といきなり言われまして(笑)。その日は本当に見学だけのつもりだったのですが、本当に困っていたのだと思います。それから各地をまわってサポートしたり、勉強して審判員の資格をとったりと、真面目に取り組んでいくことで、徐々に信頼を得ることができました。」(稲垣さん)
「CACといえばボッチャ」というくらい今では知名度がありますが、支援を始めた当初は全てが手探りの状態だったそうです。根気強く続けることで実を結んだ同社の事例は、多くのパラスポーツ支援を検討する企業にとって参考になるでしょう。
株式会社CAC Holdings
担当部署 | 経営企画部 Enterprise Value Up グループ |
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住所 | 東京都中央区日本橋箱崎町24-1 |
電話 | 03-6667-8010 |
URL | https://www.cac-holdings.com |