支援企業・団体の声
アルケア株式会社
コンセプトは「とにかく楽しむ」
パラアスリートの雇用を切り口に、社員の一体感を醸成
ギプス製品やストーマ装具など、整形外科、褥瘡・創傷、ストーマ、看護領域で事業を展開しているアルケア株式会社。2015年からパラアスリートの雇用を開始し、現在では2名のパラアスリートをそれぞれ異なった体系で雇用。また、パラスポーツ体験や講演会の講師としても派遣し、社会貢献にも尽力しています。
取組のスタートはパラアスリート雇用から
「障がいに負けることなく世界を舞台に活躍するパラアスリートを応援したい」という想いから、2015年よりパラスポーツ支援に力を入れはじめたアルケア株式会社。パラアスリート雇用を支援の取りかかりとして、まったくのゼロの状態からスタートしました。その取組について説明するのは、経営企画部 コーポレートコミュニケーショングループの小竹尚美さんです。
小竹さんが担当になったのは2016年。情報収集やつながりを広げることを目的とし、最初は会社としてではなく、小竹さんが個人でTEAM BEYONDに参加しました。
「楽しくワクワクできる情報が入手できて、『同じ想いの方たちとつながれそう!』『セミナーや交流会の情報が得られそう!』という思いから参加しました」(小竹さん)
同社では、2015年に視覚障害者柔道の北薗新光選手を、2017年に車いす陸上競技の古畑篤郎選手を雇用。北薗選手は競技に専念してもらうアスリート勤務のみ、古畑選手は競技と勤務を兼務するデュアルキャリアとして、それぞれ同社で活動しています。
「最初に視覚障がい者を雇用したのは、当社の2代目の社長が視覚障がい者だったことがきっかけです。社内に視覚障がい者がいることが当たり前の状況で、みんなも受け入れやすいだろうということで北薗を雇用しました。北薗は競技に専念してもらうアスリート勤務のみだったのですが、『社内で勤務する身近なパラアスリート社員もいてほしいよね』ということで競技と勤務を両立できる選手を探して、古畑に声をかけました。コロナ禍の今は在宅勤務ですが、それまでは週2~3回出社していました。基本はパソコンを使った業務で、車両の管理や資産管理などを担当しています」(小竹さん)
パラアスリートの雇用を皮切りに、大会の観戦・応援、パラスポーツ体験や講演会を開催するなどの取組を行っていましたが、小竹さんは「なかなか全社員を取り込めない」と感じていたと言います。北薗選手がリオ大会に出場した際は、応援団を社員から公募で選び、宿泊費などを補助。社長と小竹さんを含めた5人で現地へ応援に行きました。当時は「社内に世界で戦う選手がいるんだ」と盛り上がった一方で、関心のない社員もいたそうです。
そんな中、2018年に応援用マフラータオルを製作して、毎年7月に行われる経営方針発表会にて、全社員にタオルを配布。会の最後に、全員がタオルをかざしながら「頑張るぞ」という一体感を得られたのがターニングポイントになりました。 「タオルを手にした社員の笑顔を見た時に『大丈夫だな』と感じました。今までやってきたことに対して、なかなか反応を感じられなかったので不安がありましたが、みんながすごく盛り上がってくれたので。そのあとも『取引先にタオルを配りたい』とか『取引先が支援している車いすバスケットボールのチームの応援に行くから、タオルを持って行ってもいいか?』などの問い合わせが来るなど、想定以上の効果がありました。社内でも大会や壮行会、祝勝会などには必ず持参しています」(小竹さん)
社内制度を利用して実際にパラスポーツを体験
社員を巻き込むための施策として、新入社員研修中にパラアスリートを呼んで交流したり、社員向けにアイマスクをして視覚障がい者体験やボッチャなどのパラスポーツを体験するといった機会を設けています。また、同社には、特にパラスポーツ体験に役立つ「S&C」という社内制度があるのが特徴です。
S&Cとは「スキルアップ&コミュニケーション・コラボレーション」ということで半期に1度以上、業務以外のことを部署単位で行います。仲間とのコミュニケーションを通じ知識や技能の向上、気づきを得られる場を企画し実行することを目的として様々な補助があります。 パラスポーツ体験やパラアスリートとの交流会などを開催する場合にも、こちらの制度で補助を行っています。昨年はこの制度を使い、千葉工場の社員全員で外部講師を招き「ユニバーサルマナー検定」を受けました。
「社内制度以外でもさまざまな取組を実施しています。始めたころは全社員に向けて発信していたのですが、一気に全員を巻き込むのが難しかったので、今は小さな単位に変更しています。例えば営業所へ行ってパラアスリートが講演したり、新入社員にパラアスリートが在籍している意味や障がいについて話してもらったり、障がい者体験と交流を兼ねた女子会をやったり、北薗は子どももいるので子育て中のママ向けの会をやったり、昼休みに気軽に参加できる小さなイベントを企画したりしています」(小竹さん)
こういった取組を通して、「世界で戦う選手が社内にいるとすごくモチベーションが上がる」「一体感が生まれた」「障がい者体験を通して手引きの仕方が分かった」「パラスポーツの楽しさを知り、休みの日に家族と一緒に観戦や体験をしてもらっています」といった声が社員から出るようになりました。また、TEAM BEYONDのセミナーでNECの担当者に会ったことが縁で、2019年11月に行われたNEC主催のボッチャ大会にも参加し、優勝したそう。
「実際に体験するとその競技に興味がわいたり、おもしろさが伝わります。とにかく『難しいことは考えず、とりあえずやってみましょう。とにかく楽しみましょう』というスタンスで、さまざまなことを行動に移しています。個人では限界があるので、会社としてのバックアップがありがたいですね。実践していくと地域貢献もできるし、さまざまな効果が表れてきました。『楽しんでいたらできちゃった』ということも多かったです」(小竹さん)
地域や社会だけでなく、事業にも貢献する講演活動
さまざまな取組の中で同社が最も力を入れているのが、小・中・高校で行うパラアスリートによる講演や授業です。オリパラ教育・人権教育・キャリア教育とアプローチを変えながら学校ごとに内容をカスタマイズし、前半は講演、後半は体験メインという形で実施しています。学校側から「視覚障がい者や車いす利用者を手引きする方法や、どう対応したら良いかを教えて欲しい」といった要望があがってくることも。地域や社会貢献にもなり、パラアスリートにとってもやりがいになっていると言います。
特に古畑選手は、パラアスリートや指導者を対象とした「パラスポーツメッセンジャー」の資格を取得してから講演会での話し方がうまくなり、それまで小竹さんが作っていたプレゼンテーションを古畑選手自らが作れるようになったそう。
「講演活動は社会貢献にはなっていたのですが、なかなか事業につながらないことが多かったんです。そこで、事業活動にも貢献するために、患者会や取引先の講演会にも参加させていただいています。実施したことに関してはすべて、必ずパラアスリート本人からSNSで社内外に発信してもらっています。この活動が、社会的にも事業としても意味のあることだと繰り返し丁寧に説明してきて、ようやく2021年大会に向けて社員一丸となった感じがしています」(小竹さん)
同社では雇用するだけで終わりではなく、社業につなげたり、セカンドキャリアのための個人のスキルアップも支援するなど、先を見据えた取組を実施しています。
楽しさを共有することで、つながりを強固に
新型コロナウイルスの影響を受けながらも、同社は前向きに活動を続けています。例えば、オンライン講演会の開催や、社員の運動不足やパラアスリートとの交流が途絶えてしまうことを防ぐための動画配信、さらにはSNSを積極的に活用しています。
「これらの企画は双方向の対話ができると好評で、社内でとても盛り上がりました。パラアスリートの練習内容からプライベートな話、そして無観客で行われた大会の動画などをアップしています。動画配信やSNSを通じて、社員がどんなことに興味があるのか、どんな内容が響くのか分かってきました」(小竹さん)
メディアの活用だけでなく、小竹さんがセミナーやイベントに参加する場合も「誰か一緒に行きませんか?」と必ず声をかけ、社員を巻き込む工夫をしているそう。しかしそれは義務的なものではなく、「ワクワクを伝えたい・共有したい」という純粋な想いからです。何より生き生きと語る小竹さんの姿が素敵で、パラスポーツ支援を楽しみながらも会社を盛り上げ、事業につなげている所が印象的でした。
パラアスリート雇用から始まった同社のパラスポーツ支援ですが、パラアスリートが入社したことにより、パラスポーツや障がい者への理解が一段と深まったと小竹さんは言います。
「北薗が視覚障がい者のこと、古畑が車いす利用者のことを話す際にやはりリアルな話が多く、心に響きます。パラスポーツ支援を検討している企業には、ぜひ実際の体験を通して、パラスポーツを楽しんでほしいなと思います」(小竹さん)
同社で支援を始めた2015年当時はまわりの企業も支援が進んでいるとはいえない状況で、すべてが手探りでした。ゼロからスタートして、今では社内に根付いた取組になっています。他社からの問い合わせもあるとのこと。
「現在では他社から『教えて欲しい』と問い合わせをいただくようになりました。何社もお見えになったり、学生さんも来てくれたりしているので、そういう活動を通して啓蒙できるのがいいなと思っています。そのあと実際に『雇用しました』というところも何社かあって、お互いに情報を交換しあえるネットワークも構築できました」(小竹さん)
こういった経験から、TEAM BEYONDにはパラアスリートやパラスポーツを支援している他社の事例を紹介したり、他社とのつながりが得られる機会の提供を期待しているとのこと。その先陣を切ってくれている同社の活躍を、今後も期待しています。
アルケア株式会社
担当部署 | 経営企画部コーポレートコミュニケーションG |
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所属人数 | 569名 |
住所 | 東京都墨田区錦糸1-2-1 アルカセントラル19階 |
電話 | 03-5611-7817 |
URL | https://www.alcare.co.jp/ |