支援企業・団体の声
株式会社ブリヂストン
車いすテニスなどパラスポーツを通じた障がい者の社会参加のきっかけづくりに尽力
子どもへの情報発信にも力を入れる
オリンピック・パラリンピックのワールドワイドパートナー、ブリヂストン。従業員応援団による社員として所属するトップアスリートの応援活動を展開。また、障がい者の社会参加のきっかけとなることを目指した未経験者・初心者向け車いすテニス体験会や、子どもたちにパラスポーツの魅力を伝える活動にも力を注いでいます。
試行錯誤を繰り返しながら、応援団への参加者を増やす
2024年までオリンピック・パラリンピックのワールドワイドパートナーを務める株式会社ブリヂストン。パラリンピックに関わるきっかけは、2016年に東京2020パラリンピック競技大会のゴールドパートナーになったことにあります。
「実はゴールドパートナーとなった当初は、パラリンピックについての知識が少なく、何から始めていいか分からなかったんです。そこで、パラリンピックについて一から勉強させていただきました」
と明かすのは、オリンピック・パラリンピック室アクティベーション推進部の齋藤景介さんです。パラリンピックについて研究を重ねる一方で、社内向け活動として、同社社員の車いすバドミントン選手、小林幸平選手の応援からスタートしました。また、2017年には、夢に向かって挑戦するすべての人を応援する「TEAM BRIDGESTONE」を発足。チームのシンボルとなる「ブリヂストン・アスリート・アンバサダー」として社内外のトップアスリートたちと契約し、彼らが出場する大会での応援活動にも取り組み始めました。応援活動においては、対象の大会ごとにイントラネットで参加者を募り、従業員応援団を組成することとしたのですが、ここで課題に直面します。競技や大会によって、参加人数に大きな差が生じたのです。
「当社にはもともとモータースポーツ応援という企業文化があったものの、遠方での大会やなじみの薄い競技・選手への応援に足が向かなかったのだと思います」(齋藤さん)
そこでひと工夫、施しました。モータースポーツ応援の際におそろいのキャップをかぶっていたことなどを参考に、Tシャツやスティックバルーンといったオリジナルの応援グッズを作り、参加者に配布。応援団に一体感が生まれるとともに、お子さんを中心に好評で、参加人数が増えたそうです。また、もっと社内の隅々にまで情報を浸透させたいと、2019年度より各部門や事業所におけるオリンピック・パラリンピックのコミュニケーションの中核となる従業員アンバサダー制度もスタート。この制度設計にあたっては、TEAM BEYONDを通して知った他社の事例を参考にしました。
また、募集の際の声のかけ方も大切と説明するのは、AHL企画推進部の 久富龍次郎さんです。
「車いすテニスの田中愛美選手の応援企画の告知で、それまでは『興味のある方は応援を』としていたところを、今年は『一緒に集まって応援しましょう』と社内応援団を募集し、加えて、当社の車いすテニス関連の活動に携わる久富による解説付きとしました。これらが功を奏し、前年は0名だった参加者数が20名に増えました」(久富さん)
ちょうど地方での応援活動にも力を入れ始めた時期だったとのこと。それだけに、今後の応援活動の指針になるケースとなったようです。
障がい者への思いを込めた車いすテニス体験会
同社が新部署を立ち上げ、車いすテニスの支援に乗り出したのは2017年のこと。同社のグループ企業に田中愛美選手や車いすテニスのコーチがいること、テニスコートを所有し、テニス事業も展開していることなどから、ブリヂストングループと親和性が高いと判断した結果といいます。サポート活動の一環として、東京・小平のブリヂストンのテニスコート2面を人工芝から、車いすテニスもできるハードコートに改装。加えて雨天でも練習できるようにと、屋根付きコート2面を新設しました。
一方で、草の根レベルの活動も重視。小平のコートでは、未経験者・初心者向けの車いすテニス体験会を開催しています。これには、もちろん競技の普及という目的もありますが、それ以上に大切にしていることがあると、久富さんは力を込めます。
「障がいのある方の中には、自宅に引きこもりがちな方がたくさんいらっしゃると伺っています。そうした方たちが外出していろいろな方と交流し、社会に踏み出すきっかけになればと考えています」(久富さん)
参加者募集にあたっては、久富さんが開催地周辺の病院や福祉施設などを一軒一軒訪ね、写真を見せながら体験会の趣旨を説明したり、チラシを配布したりしているといいます。そうしたていねいな活動が実を結び、毎回、定員いっぱいの参加者が集まるそうです。
また、この活動を通じて、周辺自治体のオリンピック・パラリンピック担当部署や東京都障害者スポーツ協会、日本車いすテニス協会、神奈川県車いすテニス協会、日本二分脊椎症協会などとのつながりも生まれました。この交流の広がりと障がいへの理解の深まりから、次の展開に向けたアイデアも湧いてきたと語ります。
「当社のグループ会社ではパラ水泳の個人指導も行っているのですが、障がいの状態により、車いすテニスやパラ水泳は参加が難しい方もいらっしゃいます。そのため、もっと多くの方が気軽に参加できるパラスポーツの体験会も行いたいと、研究を始めたところです」(久富さん)
こうした体験会は、同社にとってもメリットがあるといいます。
「車いすテニス体験会では、従業員が球拾いのボランティアとして参加するのですが、その前日には、従業員でもあるパラバドミントンの小倉理恵選手を講師役に迎えてマナー研修を行い、車いすユーザーとの接し方を学んでもらっています。従業員にとっては、多様性を理解したり、社会貢献意識を養う貴重な機会となっています」(久富さん)
「こうした多彩な活動を通じて、私を含め多くの従業員が、障がいのある方に配慮できるようになってきているのではないかと感じています。企業としての総括はまだこれからなのですが、こうした視点を持つことが将来の当社の企業活動につながるのではというのが私の予想であり、希望でもあります」(齋藤さん)
パラスポーツの盛り上げに必要なこと
こうした精力的な活動を通じて、パラスポーツを盛り上げる上で大切なことが3つあると気づいたと、齋藤さんは語ります。1つ目は選手の背景にあるストーリーを知ること、2つ目は会場で生観戦すること、そして3つ目は体験することです。
「競技への思いから好きな食べ物まで、選手のことを知れば知るほど応援したくなるものだと実感しています。また、パラスポーツは多種多様です。まずはいろいろな競技を観戦してみてください。間近で見るパラスポーツは非常に迫力があり、観る競技としての面白さが実感できるはずですし、自分好みの競技にも出会えるのではないかと思います。さらに、昨今はパラスポーツ体験の機会が増えているので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。体験すれば、例えば車いすを操作しながら競技をすることがいかに難しいか、よく分かります」(齋藤さん)
この「知る、観る、体験する」を繰り返すことで、パラスポーツの醍醐味やパラアスリートのすごさが理解できるようになり、結果、パラスポーツの盛り上げにつながっていくのはないかと、齋藤さんは分析します。
同社では、本番に向けてパラスポーツの盛り上げを加速させようと、今後は小中学生に向けた情報発信にも力を入れていく方針です。
「パラリンピックで一番成功したといわれるロンドン大会を研究した結果、まずは子どもたちにその魅力を伝えることが重要だと分かりました。パラスポーツやパラアスリートを知った子どもたちは、親にその魅力を伝え、試合を観に行こうと誘う、いわゆるリバースエデュケーションが起こるからです。全国で展開中のお子さん向けスポーツイベント『ブリヂストン×オリンピック×パラリンピック×a GO GO!』でも、その効果を期待して、今年からオリンピックとパラリンピックが半分ずつになるよう内容を構成し直して実施しています」(斎藤さん)
さらに2019年9月からは、パラリンピックとパラスポーツをきっかけに共生社会について考える「みんなの夢会議」をスタート。パラリンピックについての講義とパラスポーツ体験、共生社会について考えるワークショップの3部構成で、第1回は従業員の家族を対象に開催。大好評だったことから、第2回は横浜市において一般の方を対象に開催予定です。
ワールドワイドパートナーとしての役割を果たすべく、真摯な研究とていねいかつ地道な取組を積み重ねながら、独自の道を切り拓いている同社。その活動は、2020年とその先の日本と世界を明るく照らすものとなるに違いありません。
株式会社ブリヂストン
担当部署 | オリンピック・パラリンピック室 |
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所属人数 | 37名 |
担当部署 | AHL企画推進部 |
所属人数 | 17名 |
住所 | 東京都中央区京橋3-1-1 |
電話 | 03・6836・3001(代表) |
URL | https://www.bridgestone.co.jp/ |