TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「11/16、17 第45回八王子いちょう祭り(八王子市)」実施レポート

2024.11.29
TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「11/16、17 第45回八王子いちょう祭り(八王子市)」実施レポート

2024年11月16日(土)・17日(日)、東京都八王子市で開催された「第45回八王子いちょう祭り」で、「TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム」を実施しました。

両日に開催された「八王子いちょう祭り」は、八王子市追分町から高尾駅入口までの約4キロメートルにわたるいちょう並木を中心に、市内各地に会場が点在。毎年約50万人が来場する市民手づくりのイベントです。
ゲストアスリートとしてお迎えしたのはアンプティサッカーの松崎佑亮(まつざき ゆうすけ)選手と小美濃健人(おみの けんと)選手、新井誠治(あらい せいじ)選手と今野浩(こんの ひろし)選手です。松崎選手と小美濃選手は16日、新井選手と今野選手は17日に登場し、アンプティサッカーを指導していただきました。
このほか、実際に選手が練習で使用するカヌー用エルゴマシンを使ったパラカヌー体験や、VRを活用したパラアーチェリー体験ができるコーナーを設けました。

当日の様子やそれぞれのパラスポーツの魅力を紹介します。

アンプティサッカー

TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム「11/16、17 第45回八王子いちょう祭り(八王子市)」実施レポート

アンプティサッカーは、下肢に障がいを持ったフィールドプレイヤー6名と上肢に障がいを持ったゴールキーパー1名の計7名で構成されます。プレーヤーは義足や義手を外し、フィールドプレイヤーはクラッチと呼ばれる歩行補助用の杖で体を支え、片足でボールを蹴ってプレーします。ゴールキーパーは使用しない側の腕(切断、欠損をしている腕)をシャツの中に入れたり、胴体に固定したりします。アンプティサッカーの魅力は、クラッチを使い、片足のみでプレーするというルールの下で、健常者も障がい者も関係なく一緒に競技が楽しめるところ。健常者がチームメンバーとして参加できる大きな大会もあるそうです。

今回の体験会は「C会場・陵南公園野球場」で開催。1回45分、1日6回行われましたが、どの回もすぐに参加希望者で埋まりました。参加者は、小さな子どもから中学・高校生、シニアまで、幅広い世代にわたりました。
16日に指導にあたってくれたのは、松崎選手と小美濃選手の2名。
松崎選手は2018年1月に事故により左足大腿を切断し、9月からアンプティサッカーを始めました。2023年のポーランドアンプティカップでは主将を務め、現在も日本代表メンバーです。

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小美濃選手は2018年8月に交通事故により右足大腿を切断し、2019年6月からアンプティサッカーを始めて、2023年9月の国際大会では代表メンバーとして4位入賞を果たしているトップ選手です。二人ともクラッチを器用に使い、猛スピードでグラウンドを走り回ってボールを蹴っていて、思わず見ほれてしまいます。

体験会では、最初にクラッチの使い方を学びました。松葉杖を使ったことがある人なら、クラッチ(杖)で体を支え、片足を前に出す感覚がイメージできるかと思います。ここまでは比較的容易にできました。次に走り方を教わりました。
「ケンケンパの要領で、パの瞬間にクラッチを地面について体を運ぶと加速がついて走れます」と松崎選手。最初は感覚がつかめずうまく前に進めなかったり、思わず両足をついてしまったりと大変でしたが、慣れてくるとほとんどの参加者が走れるようになっていました。

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その後は、パスやドリブル、シュートを練習し、最後に松崎選手と小美濃選手も入って2チームに分かれて、ミニゲームを行いました。フィールドのサイズは公式ルールでは40メートル×60メートルですが、今回の体験会では約20メートル×約25メートルのサイズで実施しました。クラッチを使って走り回りボールを追いかけていると、汗が止まらず、息が切れます。しかしそれ以上に、みんながとても楽しそうに笑顔でプレーしていたのが印象的でした。ゴールも続々決まり、試合後はハイタッチの代わりにクラッチでタッチして、健闘をたたえ合いました。

小美濃選手は「こういった体験会を通じて、パラスポーツの認知度が上がっていってくれると嬉しいです」と話していました。
松崎選手は「私には、国立競技場を観客で埋めて、そこで試合がしたいという大きな目標があります。そのためにも、こうした体験会を通じてアンプティサッカーに興味を持ってもらい、試合を見に来てもらえたらと思います」と、その胸の内を語ってくれました。

翌17日のゲストアスリートは、新井誠治選手と今野浩選手。
新井選手は、自身が35歳の時に血液腫瘍で左足を切断しており、過去にアンプティサッカーの国際大会に日本代表として三度出場した経歴をお持ちです。また、アンプティサッカー以外の競技にも携わり、2024年10月に行われたアジアトライアスロンパラカップにおいては、男子PTS2の部で1位となった選手です。

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また、今野選手は23年前にバイク事故で右足切断となり、2015年からアンプティサッカーを始めました。自身が所属するチーム「FC ALVORADA(エフシー アウボラーダ)」でキャプテンを務めています。

前日と同様に参加者たちは基本動作を教わり、ドリブルやパス、シュート練習を行った後、ミニゲームに参加。この日も友人同士や家族で参加する人が多く、性別を問わず小さな子どもから大人まで幅広い年齢でも一緒に楽しみながら試合を行いました。参加者自身が難しく感じる動作があると、どのような方法で対処しているのかなどを新井選手や今野選手に積極的に質問している姿が印象的でした。

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休憩の合間には、地元の少年サッカーチームに所属している小学生数名と一緒に遊ぶ様子が見られました。小学生のドリブルを華麗なディフェンスで止める新井選手に、小学生の内のひとりは「片足しかなくても、僕らと同じように走ったり、ボールを蹴ったりできて本当にすごい。(新井選手の動きが)早くて、パスもシュートもする隙がない。」と息を切らしながら語っていました。
新井選手も「クラッチが2本あるだけで、片足がない僕たちでも健常者と一緒に変わらずに遊べて動けるのだということを体験できたのではないでしょうか。」と語っていました。

体験会の後、今野選手は、「サッカーという競技はいろんな形で楽しめるもので、みんながよく見ている11人のサッカーもあればフットサルやビーチサッカーも健常者にありますが、障害を持った方も車椅子サッカーやブラインドサッカーもあって、その中の一つにこのアンプティサッカーもあるということを知ってもらえたら。健常者も参加できるので、健常者の方とコミュニケーションを取りながら今後はやってみたいですね」とコメント。

新井選手は、「今日は家族や友だち同士で体験してくれたことで、日常会話のきっかけになることがとても大事だと思います。また、(事情があって)会話ができない家庭であっても、こうやって同じ空間で一緒に笑って楽しむ時間が生活の一部になったらと思います。僕らはスポーツ選手でもありますが、これまでの経験からいろんな物事が伝えられる立ち位置だと思うので、体のいろんなところにこれから不自由が出てくるかもしれない中で、楽しいことは自分から探しに行けばいくつでも自分の前に現れてきて人生が彩り豊かになる、と気づいてもらえることが一番の願いですね」と話してくれました。

カヌー

水上につくられた直線距離の200メートルコースをカヌーで進み、順位を競うスプリント(短距離競技)競技で、パラリンピックの正式競技としても採用されているパラカヌー。両側にブレード(水かき)が付いたパドルをこいで前に進む「カヤック」と、アウトリガーと呼ばれる浮き具付きのカヌーに乗り、片側だけにブレードがついたパドルで左右どちらかをこぎながら進む「ヴァー」の2種目があります。

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16日は、パラカヌー界のレジェンドとして知られ、現在も日本代表選手として活躍する小山真(こやま まこと)選手がサポートスタッフとして参加。選手も練習で使っているというカヌーの動きを模したトレーニング機器「カヌー用エルゴマシン」を使い、パドルを動かして100メートルのタイムを競うカヌー体験を行いました。

まずはエルゴマシンの使い方の説明を受けます。ロープで本体とつながったパドルを頭の上まで持ち上げ、肘が直角になるようにします。その状態で、パドルを左右交互に引くようにこいでいくと、100メートルと表示されたメーターがだんだん減ってゼロに近づいていきます。実際に動かしてみると、トレーニング用ということもあって思った以上に力が必要で、参加者は顔を真っ赤にしてパドルを動かしていました。

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体験会場に設置したホワイトボードには、体験した人のタイムが記録されていました。大人は40秒から1分程度、子どもは1分から2分ほどの記録が多いようでした。途中、何度かデモンストレーションでタイム測定を披露してくれた小山選手は、100メートルを30秒程度で漕いでいました。
終えた後の小山選手は、「マシンのセッティングの仕方にもよりますが、トップ選手は100メートルを十数秒というタイムを叩き出します」と紹介があり、参加者からはどよめきが湧き上がっていました。

小山選手は「陸上だと車いすでは行けないところがどうしてもあります。でもカヌーに乗ったら健常者と同じ動きができて、みんなと同じところに行くことができる。実はカヌーは、ものすごくバリアフリーな乗り物なんですね。日本はまだ競技人口が少ないので、ぜひチャレンジする人が増えていってほしいと思います」と語っていました。

VRを活用したアーチェリー体験

会場ではVR(ヴァーチャル・リアリティ=仮想現実)を活用したアーチェリー体験も実施しました。パラアーチェリーは、上肢欠損の選手が手を使わずに矢を放つための道具「リリーサー」を肩に装着したり、体幹が安定しない選手が世界でたった一つの車いすの開発に取り組んだりと、残された機能を最大限発揮するために、選手一人一人、障害に合わせて工夫された用具も見どころのスポーツです。

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今回の体験では、参加者は車いすに座り、VRゴーグルを装着。仮想空間上に現れる的に向かって3回矢を放ち、対戦相手と得点を競いました。

コントローラーを1本ずつ両手に持ち、利き手ではないほうの手で弓を支え、利き手で弓を引いて狙いを定めます。車いすを操作する必要はありませんが、ピタリと的に焦点を定めて矢を放つのは難しく、中心を射るのは至難の技。高い集中力が必要な競技であることを体験できました。

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その他

他にも会場ではゴールボール、車いすバスケットボール、卓球、車いすラグビーといったさまざまなパラスポーツの魅力や面白さを伝えるパネル展示を行いました。
視覚障がいのある選手が、鈴の入ったボールを投げ合い得点を競う「ゴールボール」のボールも展示され、自由に触ることができました。バスケットボールとほぼ変わらない大きさですが、持ってみた参加者は「こんなに重いんですね」と驚いた様子で、ボールを投げて感触を試していました。

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また、2025年に東京で開催されるデフリンピック(聴覚障がい者のための国際総合スポーツ競技大会)をパネルで紹介するコーナーも設置し、来年に迫った国際大会により深い関心をもってもらえるようにしました。

16日には同じ会場内の本部ステージにて、「TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム」のPRタイムも。松崎選手、小美濃選手、小山選手が壇上に上がり、競技を始めたきっかけや自身の障がいのこと、それぞれの競技の魅力について語りました。最後は松崎選手と小美濃選手がリフティングのパフォーマンスも披露。だんだんと観客が増えて、3人の話にじっと耳を傾けていました。

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一線で活躍するアスリートをゲストに招き、体験や展示を通じてパラスポーツの魅力を知ってもらう「TEAM BEYONDパラスポーツ体験プログラム」。実際に体験することで、楽しさや難しさ、選手たちのすごさを知っていただけたのではないかと思います。

次回の2025年1月26日(日)は、第22回新宿シティハーフマラソン・区民健康マラソン(新国立競技場外構部)で実施します。ぜひご参加お待ちしています!

パラスポーツ体験プログラムでは、スタンプラリーを実施しています。集めたスタンプ数に応じてオリジナルグッズをプレゼント!皆さんの参加をお待ちしています!

・スタンプラリーの詳細はこちら↓
https://www.para-sports.tokyo/sports/taiken/passport

・パラスポーツ体験プログラム 今後の実施予定はこちら↓
https://www.para-sports.tokyo/sports/taiken/schedule

・TEAM BEYOND LINE公式アカウントの詳細はこちら↓
https://www.para-sports.tokyo/topics/activity/line_open

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