支援企業・団体の声
錦城護謨株式会社
手軽に設置できる屋内用誘導マットで
パラスポーツ大会をサポート
ゴム製品の製造企業、錦城護謨(きんじょうごむ)。同社製品であるゴム製の屋内用誘導マット「HODOHKUN Guideway(歩導くん ガイドウェイ)」は、凹凸がなくつまずきにくい上に手軽に設置できるため、パラスポーツ大会などのイベントに提供し好評です。ブラインドテニスなど視覚障がい者スポーツ支援にも力を入れています。
手軽に設置できる誘導マットで
パラスポーツ大会をサポート
視覚障がい者が安全に歩けるよう、路面に設置されている視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)。屋外ではよく目にしますが、屋内ではまだ同様の設備の設置が進んでいるとはいえません。屋内のバリアフリー化を進めたいとは思っても、大規模改修などが必要なのではと考えて二の足を踏むケースも少なくなさそうです。
そこで、この状況を簡単に改善できる方法として注目されているのが、30センチ角のゴム製屋内用誘導マット「HODOHKUN Guideway(歩導くん ガイドウェイ)」です。
同製品を製造販売している錦城護謨株式会社は、家電や生活用品、医療機器向けのゴム製品の製造や、土木用樹脂製品の製造・施工を行う企業です。協力企業が製造・販売していた誘導マットの販売・設置施工を担っていましたが、同社が長年培ってきた技術を活用し、開発・製造にも携わるようになりました。そして改良版として、2015年に発売したのが同製品です。
この誘導マットの特長の一つは、誘導ブロックのような凹凸がないこと。白杖で叩く際の音や感触の違いだけで、視覚障がい者は床面と誘導マットとの違いが分かるためです。また、その厚さは一番薄いところが1ミリ、一番厚い中央部が7ミリと、ごくゆるやかなスロープ形状で、床面との段差もほとんどありません。そのため、高齢者など足元に不安を抱える人でもつまずきにくく、ベビーカーや車いす、ヒールのある靴でも無理なく通れます。
さらに、設置の手軽さも画期的です。
「誘導マットを必要な分だけつなぎ合わせて、両面テープで貼り付けるだけなので、本格的な工事をせずに屋内をバリアフリー化できます。また、撤去もはがすだけと簡単なので、大会やイベントなど一時的に使いたいときにも便利です」
と説明するのは、ソーシャルイノベーション事業部の阿部貴弘さんです。
この特長を活かして、同社ではバラスポーツ支援にも精力的に取り組んでいます。東京都障害者スポーツ大会「スポーツの集い」をはじめ、全国障害者スポーツ大会のサウンドテーブルテニスやフロアバレーボール大会、日本身体障がい者水泳選手権大会といった視覚障がい者が数多く参加するパラスポーツ大会の会場に、誘導マットを有償または無償で提供。同社社員が現地を訪れ、設置と撤去を行っています。
「視覚障がい者向けのスポーツの多くは音を頼りにプレーします。そのため、プレー中は静かにしなければならず、白杖が使えないこともあります。にもかかわらず、スタッフの数が不足していて移動サポートができないことも少なくありません。さらに、築年数が古い会場は誘導路がないところも多いんです。そこで、視覚障がいのある方がいつでも移動できるよう、会場の出入り口やトイレ、階段、控室といったところに誘導マットと警告ブロックを一時設置させていただいています」(阿部さん)
2017年からは日本ブラインドテニス連盟を協賛企業としてサポート。大会会場での誘導マットの設置のほか、競技紹介のリーフレットや動画も制作。TEAM BEYONDのイベント「BEYOND STADIUM(2019年)」「BEYOND FES 丸の内(2018年)」「BEYOND FES 日本橋(2019年)」では、ブラインドテニス競技のPRも行いました。
「視覚障がい者向けの球技は、音の鳴るボールを床や台の上で転がすものが一般的です。ところがブラインドテニスは、通常のテニス同様、空中に浮いたボールを、全く見えていないまたはよく見えていない状態で打ち合うという、非常に難易度が高いスポーツで、その難しさが面白さでもあります。実は日本発祥のパラスポーツであり、現在は世界約30か国で楽しまれてもいるのですが、これまで国内ではなかなかPRできず、普及が進んでいませんでした。しかし、TEAM BEYONDのイベントに出展したところ反響があり、当社としてもよい橋渡しができたとうれしく思っています」
と、同部署の横内由美子さんも手ごたえを感じているそうです。
社内のバリアフリーの意識も製品も、さらなる進化を目指す
パラスポーツ支援をきっかけにビジネスにつながったケースもあります。例えば、渋谷区を拠点とする「パラスポーツを応援する草の根運動の会」(通称「パラ草の会」)に参加したところ、そこで知り合った商業施設の担当者が誘導マットを高く評価し、導入へとつながりました。
「あれはうれしかったですね。カラーバリエーションも豊富にそろえているので、おしゃれな商業施設にも違和感なく設置できる点もよかったのではないかと思っています」(阿部さん)
同社の誘導マットはすでに国内外で高く評価されていて、国内の盲学校をはじめ、スポーツ施設や病院、大学、図書館、金融機関など約1000か所で利用されています。近年、バリアフリーやユニバーサルデザインへの関心が高まっていることもあり、注目度はさらに上昇中です。
「おかげさまで、誘導マットのビジネスは右肩上がりで成長しています。福祉関連事業は将来性があると考え、今後さらに力を入れていこうと、2019年11月より福祉関連事業専門の部署、ソーシャルイノベーション本部を立ち上げました」(阿部さん)
このソーシャルイノベーション本部の中でも、パラスポーツ大会での誘導マットの設置も行うバリアフリー推進課のスタッフは全員、ユニバーサルマナー検定を受講しているそうです。
「誘導マットの設置作業の際、ボランティアの方たちと一緒に視覚障がいの方のサポートをすることがあるので、事前に障がいのある方への接し方を学んでいます」(阿部さん)
知識を身につけたうえで実践を重ねることで障がいへの理解が進んだと、阿部さんと横内さんは語ります。
「障がいは特別なことではないと分かり、意識が大きく変わりました。私たちのスタッフはみな、困っている様子の方がいれば、積極的に声をかけるようにしています」(阿部さん)
「スタスタと歩いていた方が急にピタッと止まると、行き先を見失ったのかなとか、手で何かを探すようなしぐさをしていると、沿って歩くための壁を探しているのかなといったことが分かるようになりました。必ずしも目的地まで付き添う必要がないことも多いですし、一人で行動したい方もいるので、お気持ちを確認したうえで、必要に応じてサポートをしています。距離を置いて見守ることもありますが、それも立派なサポートなんですよ」(横内さん)
福祉分野に関心が高い同社社長の思いもあり、同社では今後、ユニバーサルマナー検定の受講を全社に広げていきたいと考えています。
「パラスポーツやバリアフリーへの関心を高めるためには、実際にパラスポーツを見たり、障がいのある方と接するのが一番いいと思っています。そのためにも、まずはパラスポーツの観戦会ができるといいね、なんて話しています」(横内さん)
また、誘導マットについてもさらなる進化を目指し、挑戦を続けています。
「すべての方にとって便利な誘導路となるよう、熱癒着シールで行き先などをピクトグラムや文字で表示できるようにしてはいるのですが、誘導マットは視覚障がい者専用とのイメージがあるのか、予算が取りにくいとの相談を受けることがあります。そこで、AIやサイネージを組み合わせることで空間の価値を高めるような誘導路の開発を急ピッチで進めています」(阿部さん)
さらに、今後は新たな視覚障がい者スポーツの支援も検討中です。
「まだ広く知られていないパラスポーツがたくさんあるので、今後は、ブラインドテニスの支援を続けつつ、さらに別の競技団体もサポートしていけたらと考えています」(阿部さん)
障がいが多様なら、障がいのある方が楽しむスポーツもまた多様。だれもが自分にぴったりのスポーツを見つけ、気軽に楽しめる社会を実現するには、錦城護膜のように細やかなところにまで目配りができる企業の存在とそのサポートが大きな力を発揮するのは間違いありません。
錦城護謨株式会社
東京支社
担当部署 | ソーシャルイノベーション事業本部バリアフリー推進課 |
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所属人数 | 11名 |
住所 | 東京都港区芝大門2-12-9(HF浜松町ビルディング) |
電話 | 03・3433・2631 |
URL | http://www.kinjogomu.jp/ |